こんにちは。
今回は第7次医療法改正について、若干踏み込んでのお勉強です。
第26回医療経営士3級試験では第7次医療法改正についてやたら難しい問題が出たとの声も耳にしました。
そこで『医療法関連のまとめ』に加えて、第7次医療法改正に若干細かく記事にまとめました。
それでは早速、始めていきましょう。
第7次医療法改正
第7次医療法改正の目的は地域医療連携推進法人制度の創設と、医療法人のガバナンス強化(医療法人制度の見直し)です。
地域医療連携推進法人については医療法関連でも解説していますが、もう少し突っ込んだ内容をここで説明します。
医療法人のガバナンス強化も医療法関連に記載した通りですが、ここでは医療法人の合併・分割などについて説明することにします。
地域医療連携推進法人
地域医療連携推進法人って何?という基本的なことについては医療法関連を読んでいただくとよいかと思います。
と言いつつも、簡単にまとめておきます。
地域医療連携推進法人は、地域における複数の医療機関の機能を分担したり連携したりすることを推進するために第7次医療法改正で創設された社団法人です。
都道府県知事の認定を受けて地域医療連携推進法人になることができますが、その元は、医療機関を開設する医療法人や介護事業等の事業所を開設・管理する法人などを社員とする法人になります。
ここでは地域医療連携推進法人の社員は法人であることは押さえておきましょう。
社団における社員とは株式会社における株主に該当すると考えることができるため、社員が法人ということが成り立ちます。
それでは地域医療連携推進法人の認定要件をおさえていきます。
医療経営士テキスト第3巻には以下の4点が記載されています。
認定要件
- 医療連携推進業務を行うことを主たる目的とすること
- 医療連携推進業務を行うのに必要な経済的・技術的能力を有すること
- 医療連携推進業務を行うにあたり、社員・理事・監事・職員その他の関係者に特別な利益を与えないこと
- 地域連携推進業務以外の業務を行う場合は、主たる目的である医療連携推進業務の実施に支障を及ぼさないこと
また、地域医療連携推進法人はその名称中に『地域医療連携推進法人』という文字を用いなければならないこととなっています。
逆に地域医療連携推進法人でない法人は紛らわしい文字を使用することはできません。
一方で厚生労働省資料を見ると地域医療連携推進法人の認定基準は医療経営士テキストに記載のものを含めて全部で20項目ありました…
テキストでは重要ではないということで省かれたのかもしれませんが、一応掲載しておきます。(上述の4つは省略します)
認定要件(厚生労働省)
- 医療連携推進方針が前条第二項及び第三項の規定に違反していないものであること
- 医療連携推進区域を定款で定めているものであること
- 社員は、参加法人及び医療連携推進区域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するために必要な者として厚生労働省令で定める者に限る旨を定款で定めているものであること
- 病院等を開設する参加法人の数が二以上であるものであることその他の参加法人の構成が第七十条第一項に規定する目的(次号及び第十号イにおいて「医療連携推進目的」という。)に照らし、適当と認められるものとして厚生労働省令で定める要件を満たすものであること
- 社員の資格の得喪に関して、医療連携推進目的に照らし、不当に差別的な取扱いをする条件その他の不当な条件を付していないものであること
- 社員は、各一個の議決権を有するものであること。ただし、社員総会において行使できる議決権の数、議決権を行使することができる事項、議決権の行使の条件その他の社員の議決権に関する定款の定めが次のいずれにも該当する場合は、この限りでない
- 参加法人の有する議決権の合計が総社員の議決権の過半を占めているものであること
- 営利を目的とする団体又はその役員と利害関係を有することその他の事情により社員総会の決議に不当な影響を及ぼすおそれがある者として厚生労働省令で定めるものを社員並びに理事及び監事としない旨を定款で定めているものであること
- 役員について、『理事三人以上及び監事一人以上を置く』、『各役員について、その役員、その配偶者及び三親等以内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が役員の総数の三分の一を超えて含まれることがないものであること』のいずれにも該当すること
- 理事のうち少なくとも一人は、診療に関する学識経験者の団体の代表者その他の医療連携推進業務の効果的な実施のために必要な者として厚生労働省令で定める者であるものであること
- 代表理事を一人置いているものであること
- 理事会を置いているものであること
- 地域医療連携推進評議会を置く旨を定款で定めているものであること(医療を受ける者、関係団体、学識経験者などで構成)
- 参加法人が次に掲げる事項その他の重要な事項を決定するに当たつては、あらかじめ、当該一般社団法人に意見を求めなければならないものとする旨を定款で定めているものであること
- 第七十条の二十一第一項又は第二項の規定による医療連携推進認定の取消しの処分を受けた場合において、医療連携推進目的取得財産残額があるときは、これに相当する額の財産を当該医療連携推進認定の取消しの処分の日から一月以内に国若しくは地方公共団体又は医療法人その他の医療を提供する者であつて厚生労働省令で定めるものに贈与する旨を定款で定めているものであること
- 清算をする場合において残余財産を国等に帰属させる旨を定款で定めているものであること
- 前各号に掲げるもののほか、医療連携推進業務を適切に行うために必要なものとして厚生労働省令で定める要件に該当するものであること
要件の項目の文言に地域連携推進業務という言葉が多く出てきましたね。
そもそも地域連携推進業務とはいったい何を指すのでしょうか。
医療法第70条第2項、第70条の8によると地域連携推進業務は以下のようにまとめられます。
地域連携推進業務
- 医療従事者の資質向上のための研修を行うこと
- 病院等の業務に必要な医薬品・医療機器等の物資の供給
- 資金の貸し付け
地域医療連携推進法人の概要について厚生労働省資料を載せておきます。
さて、最後に地域医療連携推進法人の非営利性についての規定を見ておきましょう。
大きく3つに分けられます。
1.地域医療連携推進法人における一社員一議決権の原則、剰余金の配当禁止、残余財産の分配禁止
これはわかりやすいかと思います。
一社員一議決権は社会医療法人でも出てきましたね。
医療法人の本来の目的は営利ではないため、儲けを社員に配当すること(剰余金の配当禁止)はできないのでした。
これは株式会社が儲けがあった場合に株主に配当金を渡していることとは対照的です。
そして地域医療連携推進法人は社会医療法人や持ち分なし医療法人と同様に解散時の法人の財産は国等に返すことになります。
これには非営利性もそうですが税金の問題などもあるのでしたね。
医療法関連記事に持ち分については記載してありますので、目を通していただければと思います。
2.地域医療連携推進法人に対する都道府県知事の監督に関する規定
まず地域医療連携推進法人については都道府県知事が関与してくることを押さえておきます。
ということで地域医療連携推進法人が定款を変更する際には都道府県知事の認可が必要となります。
そして重要事項を認可するときには都道府県医療審議会の意見聴取が必要です。
一応ですが定款とは、個々の私法人の組織・活動について定めた根本規則になります。
さらに簡単に言い換えると、会社の規則・会社の憲法です。
ある政党が「憲法を変えたいんで変えまーす」と宣言しても、衆議院や参議院で認められる必要があり、国民の理解を得ることも必要になるわけです。
ある政党にとってはよい憲法改正でも、国民の利益にならなければ変えることはできないわけです。
ということで、ある地域医療連携推進法人が「定款を変えたいんで変えまーす」と宣言しても、定款変更は地域住民のためになっている必要があるわけです。
そのため都道府県知事の認可や、そのための都道府県医療審議会の意見聴取が必要というわけです。
都道府県知事の認可が必要が事項として、地域医療連携推進法人の代表理事の代表及び解職もあります。
そして認可に際しては、これまた都道府県医療審議会の意見聴取が必要になります。
この他にも都道府県知事による報告徴収(業務停止命令・役人の解任勧告に当たっては都道府県医療審議会の意見聴取が必要)や、都道府県知事による地域医療連携推進法人の認定の取消し(取消しに当たっては都道府県医療審議会の意見聴取が必要)など、都道府県知事の監督が規定されています。
医療法人の合併・分割
ここについては【新版考察】初級医療経営士テキスト:その壱の内容を見てください。
社会医療法人認定の事項
第7次医療法改正では、複数の都道府県で医療機関を開設している場合の取り扱いと、認定取り消しを受けた後の収益業務実施の取り扱いについて整備されています。
社会医療法人はと都道府県知事の認定が必要であるため、複数の都道府県に医療機関を開設していた場合、第7次医療法改正まではそれぞれの都道府県で社会医療法人の基準を満たしていなければなりませんでした。
しかし第7次医療法改正により、県をまたいでも一体化して医療に当たっている場合は主たる都道府県で認定を受ければ社会医療法人として認められることになりました。
文字だとわかりづらいので厚生労働省資料の図を見ておきましょう。
また、へき地医療を充実させることを目的とした認定要件の見直しも行われました。
さて今回はここまでです。
第7次医療法改正の柱の一つとして、医療法人のガバナンス強化(医療法人制度の見直し)もあります。
医療法関連のページに記載してある内容は押さえておきましょう。
それではまた。