みなさん、こんにちは。
今回は医療経営士試験で1問は出題されることが予想される医療広告についてまとめていきます。
医療広告の基本は医療法関連を簡単にまとめてみた。を参考にしてください。
ここではホームページなどのウェブ媒体についての広告規制について踏み込んで解説していきます。
医療広告とホームページ
ここでは看板などの医療広告とホームページなどを始めとしたウェブ媒体の違いについて簡単におさえておきます。
看板などとホームページでは何か違いがあるのでしょうか。
看板などの広告は見たいと思ってない人にも情報を提供できる性質があります。
つまり看板などのメリットは情報を無条件に届けることができるわけですね。
病院受診を考えていなかった人が、ある医療機関の看板が目に留まった結果、そこの病院を受診してみようかなと思ってくれるかもしれないわけです。
看板を出しておけば、無条件に多数の人が自院のことを知ってくれるようになるわけですから、こんなにいい手はありませんね。
医療機関とすれば目に留めてくれた方が少しでも自院を利用してくれるように看板広告で自院をアピールしたくなります。
しかし、自院のアピールは誇大広告や比較広告につながったり、情報を受け取る側が事実を誤認してしまう表現が表記されやすくなってしまうため、禁止事項が厳しく決められています。
一方でホームページはどうでしょうか。
ホームページやメルマガなどが看板広告と異なる点は、情報を知りたい人が自ら求めてくるかどうかです。
一般的に医療機関のホームページを見る人は、その医療機関についての情報を知りたくて見ているわけですね。
その際にやたらと規制があって自院の特徴を表記できなければ、情報を知りたい側にも不利益となってしまいます。
そのためホームページなどには限定解除要件という看板などでは禁止されているものの、ホームページなどでは表記してよい表現があります。
この限定解除については後述しますが、看板などとホームページなどでは性質に違いがある点をおさえておきましょう。
ホームページが規制された流れ
さて、昔は広告といえば看板などの広告を指したわけですが、現代は情報発信にウェブ媒体が欠かせないものとなりました。
ウェブでの情報発信が重要なことは医療機関にも当てはまります。
そのため多くの医療機関が自院の情報発信のためにホームページを作成しています。
なかには院長を始めスタッフによるブログなども掲載している医療機関もありますね。
平成29年受療行動調査によると、外来患者のうち情報を入手している人の情報入手先としては「医療機関が発信するインターネットの情報」が21.1%を占めており、「家族・知人・友人の口コミ」70.6%に次ぐ第2位となっています。
高齢者が多かったのかもしれませんね。
スマホなどを日常的に使用している現役世代が高齢者となっていく今後は、インターネットで医療機関の情報を取得する人の割合が増えていくことが予想されます。
そういった社会背景から、ホームページなどのウェブ媒体に対する規制として、平成29年(2017年)の通常国会で医療に関する広告規制の見直しを含む医療法等改正法が成立し、平成30年(2018年)6月1に施行されました。
それ以前はウェブサイトなどに対して規制を気にすることなく自院のアピールができていたのです。
しかし一定のルールがないと、いわゆる誇大広告や虚偽広告になりかねないということで、上記の医療法等改正法が成立しました。
実際、美容医療などに関してはトラブルが出ていました。
医療法等改正法により、広告規制の対象範囲が単なる「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」へと変更され、ウェブサイトによる情報提供も規制の対象となりました。
何がよくて何がダメなのか
医療機関の広告について、これはダメですよというネガティブリストは「医療法関連」の記事でご紹介しましたが、改めてまとめておきます。
- 虚偽広告
「絶対失敗しない」、「必ず治る」、加工・修正した術前術後の写真など - 比較広告
「日本一」、「第一位」など - 誇大広告
施設、スタッフ、治療などについて誇張や誤認をさせる内容、体験談の強調や「知事の許可を得た」など - 客観的事実を証明できない広告
患者や医療スタッフの主観に基づく内容 - 公序良俗に反する内容
- 早急な受診を過度にあおる表現
「キャンペーン実施中」など - 科学的根拠に乏しい情報で不安を過度にあおる表現
「こんな症状があれば命に関わります」など - 医療法以外の法令で禁止されるもの
それでは医療経営士問題対策としてホームページの表記についてOKかNGかを学んでいきましょう。
まずは医療機関のホームページ画面と仮定した下の図を見てください。
規則違反の箇所があるのですが、どこになるか考えてみましょう。
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どこかわかりましたか?
過去の医療経営士試験で、このような形で図が出て不適切な箇所を答えさせる問題が出題されていました。
さて、上図の違反箇所は「都知事の許可取得済み」のところですね。
全ての病院は開設時に都知事の許可を取得しています。
そのため「都知事の許可取得済み」は病院であれば当たり前なのですが、それを知らない人にとっては特別な許可を得た病院なのかと感じる表記になりますね。
いわゆる誇大広告になってしまいます。
ということで「都知事の許可取得済み」は表記することはできません。
一方で「病院機能評価認証の取得済み」については表記可能です。
病院機能評価とは日本医療評価機構が行うもので、病院が行っている医療体制や組織運営を評価しています。
評価の結果、一定の基準を達成していれば認証が与えられて日本医療評価機構の認定病院となることができます。
この評価は病院組織とは異なる第三者機関が中立的、科学的、専門的な見地から行う評価であり、全ての医療機関が認定されているわけではありません。
そのため認定病院である旨についてはホームページ上に記載することができます。
それでは他の箇所を見ていきます。
病院名は問題ありませんね。
病院の画像は見た人が誤認するような変な加工がなされていなければ問題ありません。
開院〇〇周年や受付時間などについては医療法や医療広告ガイドラインで認められた広告可能事項であるため、これらも問題ありません。
平均外来患者数や平均在院日数などは可能です。
ただし、あくまで客観的事実を記載するのみであり当該患者数に係る期間を暦月単位で併記する必要があります。
平均外来患者数が多いのですごいですよというような表記はできません。
例えば「おかげさまで平均外来患者数200人達成!!」などではNGということです。
次に専門外来についてです。
「糖尿病外来」や「認知症外来」などのように「○○外来」との表記については広告が可能な診療科名と誤認を与える事項であることから基本的には広告できません。
しかし、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトでは広告可能事項の限定解除要件を満たした場合に表記可能となります。
限定解除要件については後述しますが、上の図はホームページであり表記は問題ありません。
「○○外来」は誰もが目にする可能性のある看板広告やチラシなどでは表記することができないことには注意が必要です。
最後に自由診療の部位です。
実は上の図の表記はグレーゾーンです。
というか本気でチェックするとよろしくない表記です。
理由については自由診療の限定解除要件で後述します。
限定解除要件
さて試験対策としてホームページなどのウェブ媒体における限定解除の要件については押さえておきましょう。
医療広告は基本的には情報を入手する側が誤認するような表記はすることができません。
一方で情報を入手する側としては、診察してくれる医師はどんな専門性を持っているのか、その病院ではどんな薬剤や医療機器で検査や治療を受けることができるのかなどは気になりますよね。
病院のホームページを見るときは、むしろ情報を知りたいわけですから、細かい情報を載せてくれた方がありがたいわけです。
ということで、情報を入手する側が自ら情報を求めてくるウェブサイトなどでは一定の条件を満たせば表示が可能となる項目が決められました。
一般的な広告では不可能な表記をウェブサイトなどでは可能とするための要件が限定解除要件になります。
限定解除の要件は医療広告ガイドラインで下記のようになっています。
広告可能事項の限定解除の具体的な要件
広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の1~4のいずれも満たした場合とする。
ただし、3及び4については自由診療について情報を提供する場合に限る。1 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
2 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
3 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
4 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
1についてはウェブサイトの他に、メルマガや患者の求めに応じて送付するパンフレット等も該当します。
一方で、インターネット上のバナー広告や、検索サイトで検索時にスポンサーとして表示されるものなどは該当しません。
つまりバナー広告などは限定解除対象にはなりません。
2については電話番号やメールアドレスなど、情報を入手する側が情報提供側に容易に問い合わせをすることができる状態にしてねということです。
簡単にまとめます。
保険診療の範囲で限定解除要件を満たすためには、検索上位表記するために他社やスポンサーに費用支払いなどのない一般的な医療機関のホームページであって、お問い合わせ先をわかりやすく表記すればよいということになります。
続いて限定解除要件の3、4を見てみましょう。
3、4は自由診療に関する項目となっています。
先程、上の図では自由診療の表記部はよろしくないといたしましたが、それは何故でしょうか。
ガイドラインには3、4の補足として以下のように記載されています。
また、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用しないこと。
つまり自由診療の項目は治療等の内容、費用等、主なリスク、副作用等をリンク先などではなく、わかりやすいように表記しろということですね。
上の図では二重瞼施術料 100,000円とはわかりやすく表記されていますが、具体的な治療内容、リスクなどについてはクリック先のページに記載しています。
上の図では「詳細はこちら」や「詳細はここをクリック」などの、情報が知りたい人が容易に情報にたどり着くことができるように、もう一工夫しておくのがベストでしょう。
さらに突っ込むと二重瞼施術には埋没法と切開法があり、どちらの方法かで費用はかなり変わるようなので、例えば「二重瞼施術・埋没法 100,000円」としなれければいけません。
ちなみに美容整形・美容外科で有名な高〇クリニックのトップページでは、「二重まぶた・埋没法 メスを使わず取れにくい二重へ」という記載の直下に「詳しくはこちら」とわかりやすく表記されていて、容易に詳細な情報にたどり着くことができるようになっています。
細かく見ていくといろいろありますが、医療経営士試験では自由診療における施術名が正確がどうかまでは問われないと考えます。
つまり「二重瞼施術料 ○○円」は厳密には正しくないのですが、医療経営士試験において「二重瞼施術料 ○○円」はホームページで表記可能か?と聞かれたら、表記可能と答えるのでよいと思います。
まずは表記可能と考えて、他に不可能な選択肢を探しましょう。
万が一、他に不可能な選択肢がなければ「二重瞼施術料 ○○円」を誤りにするとよいです。
二重瞼施術料の箇所については自由診療の項目に置き換えることができますので、応用しましょう。
さて、上の図から離れてもう少し広告OK?NG?の項目を考えてみます。
手術などの治療前後の写真の掲載は広告可能でしょうか?
医療広告ガイドラインQ&Aを最初から読んでいくと、治療前後の写真の掲載は広告できないと記載されているため、医療経営士試験問題で仮に出題されたとしたら、広告不可項目として解答してしまいそうです。
しかし、ガイドライン(Q&Aではない)を詳細に読んでいくと、P9で「術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらないものであること。」と記載してあります。
第7回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会の資料「[PDF]省令(案)について」の抜粋をお示しいたします。
治療前後の写真については一律に禁止ではないことは覚えておきましょう。
まとめ
医療経営士試験ではおそらく広告不可能な項目を選択する問題がでることが予想されます。
一度、厚生労働省のガイドラインには目を通すことをお勧めいたします。
ガイドラインを通読するのは楽ではないですが、せめて点線四角内の【具体例】は見ておきましょう。
OK表現、NG表現が記載してあるので、医療経営士試験には役立つはずです。
[PDF]医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)
また、Q&Aにも目を通しておきましょう。
こちらもザーッと読んで、OK表現、NG表現をおさえておきましょう。
以上、医療広告について簡単にまとめてみました。
医療経営士試験で1問は出題されるであろう医療広告関連。
医療経営士試験では表現がOKかNGかの問題が出題されると考えます。
ガイドラインを覚えておけばいいのですが、若干面倒なときは本記事を読んでください。
それではまた!