こんにちは。
おそらくみなさんが受験を検討しているであろう医療経営士3級試験は、最近ちょっと細かいところを突き過ぎな感じが否めませんね。
とはいえ受験者は出題された問題を解くしかないので、少しでも知識を深めておく必要はあります。
ということで今回は第5次医療法改正について、若干踏み込んだ内容をお勉強していきましょう。
目次
第5次医療法改正
ポイント
- 1.医療情報提供の推進
- 2.医療安全確保の推進
- 3.医療従事者の確保への対応
- 4.社会医療法人制度の創設
医療情報提供の推進
1つ目のポイントは医療情報提供の推進です。
第5次医療法改正において、患者などへの医療情報提供に関する規定が新設されました。
医療法では『第2章 医療に関する選択の支援等』のうちの『第1節 医療に関する情報の提供等』の部分が相当します。
そこではどのようなことに触れているかをみてみます。
医療提供施設の情報公開(第6条の3)
医療法では、病院・診療所等の管理者は、厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に報告し、都道府県知事は報告された事項を公表しなければならないとしています。
その際に公表すべき事項とは下記になります。
- (1) 基本情報
- (2) アクセス
- (3) 院内サービス
- (4) 費用負担
- (5) 診療内容・提供サービス
- (6) 医療の実績・結果
さらに、それぞれの内容を細かくみてみます。
(1) 基本情報
- 1. 名称
- 2. 開設者
- 3. 管理者
- 4. 所在地
- 5. 電話・FAX番号
- 6. 診療科目
- 7. 診療日
- 8. 診療時間
- 9. 病床種別病床数
(2) アクセス
- 1. 主な利用交通手段
- 2. 駐車場の有無・台数
- 3. ホームページアドレス
- 4. 電子メールアドレス
- 5. 外来受付時間
- 6. 予約診療
- 7. 時間外対応
- 8. 面会日・時間
(3) 院内サービス
- 1. 院内処方
- 2. 対応可能な外国語
- 3. 障害者サービス
- 4. 車いす利用者サービス
- 5. 受動喫煙防止の措置
- 6. 医療相談体制・人数
- 7. 入院食の提供方法
- 8. 売店・食堂
(4) 費用負担
- 1. 保険医療機関・公費負担医療機関
- 2. 選定療養(差額ベッド、予約料金など)
- 3. 治験実施
- 4. クレジットカードの使用
- 5. 先進医療実施
(5) 診療内容・提供サービス
- 1. 専門医
- 2. 施設設備
- 3. 併設介護施設
- 4. 対応可能な疾患・治療
- 5. 短期滞在手術
- 6. 専門外来
- 7. 健康診断
- 8. 予防接種
- 9. 在宅医療
- 10. 介護サービス
- 11. セカンドオピニオン
- 12. 医療連携体制
- 13. 福祉連携体制
(6) 医療の実績・結果
- 1. 人員配置
- 2. 看護師配置
- 3. 医療安全対策
- 4. 院内感染対策
- 5. 入院計画連携体制
- 6. 診療情報管理体制
- 7. 情報開示窓口
- 8. 症例検討体制
- 9. 治療結果(死亡率など)
- 10. 患者数
- 11. 平均在院日数
- 12. 患者満足度調査
- 13. 病院機能評価認定
入院患者への書面交付(第6条の4)
病院・診療所の管理者は入院患者に対して書面を交付して適切な説明を行う必要があります。
その書面に記載するべき内容としては以下のものがあります。
- 1. 患者の氏名・生年月日・性別
- 2. 担当医師名
- 3. 傷病名・症状
- 4. 入院中の治療計画
また病院・診療所の管理者は、退院時に退院後の療養に必要な保健医療・福祉サービスに関する事項を記載した書面の作成・交付・説明に努めなければいけません。
医療安全確保の推進
2つ目のポイントは医療安全確保の推進です。
第5次医療法改正では医療安全確保のため、医療法「第3条 医療の安全の確保」のうち「第1節 医療の安全の確保のための措置」の部分において規定が設けられました。
その内容を簡単にまとめていきます。
ポイントは医療安全支援センターと医療機関の管理者が講じなければならない厚生労働省令が定める事項についてです。
医療安全支援センター
医療安全支援センターは都道府県がを設置するものです。
都道府県が設置する医療安全支援センターの業務は下記になります。
- 患者・家族からの苦情・相談に対応し、必要に応じて医療機関の管理者や患者・家族に助言すること
- 医療機関や患者・家族・住民に対して医療安全確保に関して必要な情報を提供すること
- 医療機関の従事者に対して医療安全に関する研修を実施すること
医療機関の管理者が講じること
医療機関の管理者は厚生労働省令で定められた医療安全確保のための措置を講じる必要があります。
その内容は、医療安全管理体制・院内感染対策体制の確保と医薬品安全管理体制・医療機器安全管理体制の確保になります。
医療安全管理体制・院内感染対策体制の確保としては、指針の整備や委員会の開催、職員研修の実施を行い、改善の方策を実施する必要があります。
また、医薬品安全管理体制・医療機器安全管理体制の確保については、責任者の配置、職員研修の実施を行います。
さらに、医薬品安全管理のための手順書の作成や医療機器安全管理のための保守点検計画を作成し、それらの改善の方策を実施する必要があります。
医療従事者の確保への対応
第5次医療法改正では、地域や診療科による医師不足などの問題に対応するために、医療法「第5章 医療提供体制の確保」のうち「第4節 医療従事者の確保等に関する施策等」において、諸規定が設けられました。
医療従事者の確保への対応に関しては主に医師不足対策として、医療経営士のお勉強 医師不足対策編に目を通しておきましょう。
社会医療法人制度の創設
医療法関連でも簡単に説明していますが、第26回医療経営士3級試験では社会医療法人ができない附帯業務を答えさせる問題が出題されていました。
第5次医療法改正により、従来に医療法人よりも公益的な役割を担うものとして社会医療法人が創設されました。
(医療法「第6章 医療法人」の「第5節 社会医療法人債」)
社会医療法人は救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療など、特に地域医療の確保に必要な公益性の高い医療を提供する医療法人です。
公益性の高い医療は地域にとって必要なわけですが、残念ながら収益性がよいとはいえない一面もあります。
一般的な民間の医療法人であれば赤字を垂れ流すわけにもいかないため、公益性が高いとは理解しながらも手を引いてしまうこともあります。
そのため公益性の高い医療に取り組んでいる医療法人は社会医療法人として、特別な優遇がなされるようにしたわけです。
社会医療法人は都道府県の認定を受けることでなることができます。
社会医療法人の認定要件は5つあります。
- 1. 配偶者・3親等以内の親族・これと同等の特殊関係者が役員総数の3分の1以下
- 2. 配偶者・3親等以内の親族・これと同等の特殊関係者が社員総数の3分の1以下
- 3. 医療計画に記載された救急医療等確保事業(いわゆる5事業)を行っていること
- 4. 救急医療等確保事業についての設備・体制・実績が基準に適合していること
- 5. 解散時の残余財産を国、地方公共団体、他の社会医療法人に帰属させること
社会医療法人は、病院・診療所・介護老人保健施設の経営に充当することを目的として、厚生労働大臣が定める収益業務を行うことができます。
収益業務とは、医療法人の本来業務(病院・診療所・介護老人保健施設)とは直接関連しない物品・サービスの提供を指し、社会医療法人以外の医療法人では行うことはできません。
収益業務とは農業、林業、漁業、製造業、情報通信業、運輸業、卸売・小売業、不動産業(土地建物売買を除く)、飲食店・宿泊業、医療・福祉、教育・学習支援業、複合サービス事業、サービス業と広範囲に及んでいます。
収益業務を行うには条件がありますが「社会医療法人の信用を傷つけるおそれがないこと」「経営が投機的に行われるものでないこと」とされています。
収益業務としてできないこととして鉱業、建設業、金融業、土地建物売買を押さえておくとよいでしょう。
社会医療法人のさらなる優遇項目として、救急医療等確保事業の実施に資することを目的に社会医療法人債を発行でき、法人税等が免除されるなどの税制上の優遇措置もあります。
また、社会福祉事業のうち、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、救急施設、厚生施設及び軽費老人ホーム(A型、B型)を除くものについての事業(例:児童入所施設や障害者入所施設)も可能となります。
さらに、みなし寄付金も認められています。
(収益事業から収益事業以外の業務に支出した金額を寄付金とみなして、収益業務に係る所得金額の50%又は年200万円のいずれか大きい金額が、損金算入限度額とされる)