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このページは、2018年7月に全巻が新版になった初級医療経営士テキストを読み込んだ管理人が、それ以前の版と比較して変更・追加になった点を中心に解説し、医療経営士試験の合格に近づいてしまおうというものです。
医療経営士3級試験の出題範囲は一応初級テキストからとなっているので、今回新しい情報として記載されている点は試験でも狙われやすいのではと考えています。
それから本サイトの通常ページで扱っていなかった項目も若干取り上げています。
それでは、まずは医療経営士3級試験で最も重要といっても過言ではない「医療法関連(テキスト第3巻)」についてみていきましょう。
目次
医療関連法規
「医療関連法規」の意味については前版でも扱われていますが、新版では「法律・省令または告示・通知の関係」として1ページ増加で説明がされています。
医療関連法規で覚えるのは、「憲法、法律、政令、省令、告知、条例、規則、通知」とその関係についてです。
簡単にまとめます。
憲法
日本国の最高法規。全ての法規や行政の活動は憲法に反してはならない。
改正は国会の衆議院および参議院の両院3分の2以上の賛成で発議され、国民投票で過半数の賛成によって承認される。
法律
国会の両院の過半数の賛成で制定、改正される規則。
政令
法律の細部について内閣が定めるもの。「~法施行令、~に冠する政令」などの名称になっている。
省令
法律の細部について各省大臣が定めるもの。「~法施行規則」などの名称になっている。
法律、政令、省令を合わせて法令とよぶが、効力は法律>政令>省令の順に強い。
また、政令と省令を合わせて命令とよぶ。
告示
法律の細部について各省大臣が定めるもの。
省令は法令ですが、告示は法令ではありません。
医療経営士3級試験においては、見た目で省令か告示かがわかればよいと思います。
例えば、「~法施行規則」ときたら「省令」というような感じですね。
また省令は「第○条 ○○○」などのような表現され、告示は箇条書きや一覧表などで表されることが一般的です。
まぁこれは「ふ~ん」という感じでよいでしょう。
条例
都道府県や市区町村などの地方公共団体が国の法律とは別に定めるもの。
規則
知事や市区町村長などの地方公共団体の長が国の法律とは別に定めるもの。
国の法律に対して地方の条例、国の命令に対して地方の規則といえます。
通知
各省が都道府県知事などに宛てて法令の解釈などを通達するもの。
通知は国民に直接向けられたものではありません。
医療法改正
新版では「第7次医療法改正」、「第8次医療法改正」について新たに記載がなされています。
が、扱いはたいしたことありません。
当サイトの「医療法関連」で解説した内容に加えて、第7次医療法改正では「医療法人の分割に関する規定」、第8次医療法改正では「特定機能病院の管理強化」もなされていたことを覚えてけば、内容としてはばっちりではないでしょうか。
医療法改正については、第何次で何が行われたか、歴史的順番などが大切ですので、改めて頭に入れておきましょう。
医療法総則
医療法の条文は別記事でも扱っていますが、新旧初級テキストの比較から新版で強めに扱われていたのは以下になってきます。
医療従事者の責務(第1条の4)
- 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第一条の二に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。
- 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。
- 医療提供施設において診療に従事する医師及び歯科医師は、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携に資するため、必要に応じ、医療を受ける者を他の医療提供施設に紹介し、その診療に必要な限度において医療を受ける者の診療又は調剤に関する情報を他の医療提供施設において診療又は調剤に従事する医師若しくは歯科医師又は薬剤師に提供し、及びその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
- 病院又は診療所の管理者は、当該病院又は診療所を退院する患者が引き続き療養を必要とする場合には、保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携を図り、当該患者が適切な環境の下で療養を継続することができるよう配慮しなければならない。
- 医療提供施設の開設者及び管理者は、医療技術の普及及び医療の効率的な提供に資するため、当該医療提供施設の建物又は設備を、当該医療提供施設に勤務しない医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手の診療、研究又は研修のために利用させるよう配慮しなければならない。
なんと、医療法の条文前編のまとめで、これはいらないかな~と思っていた条文が、初級テキスト新版で加わっていました…
見ておいてよかった。
本条文を簡単にまとめると、医療機関の医療従事者や管理者は、良い医療を行うためにも患者への説明や理解を得るように努力し、他の医療提供施設・スタッフともしっかり連携を取ってくださいということです。
病院・診療所などと紛らわしい名称の禁止(第3条)
これはそのままで、病院・診療所でないものは紛らわしい名称をつけてはいけませんということですね。
条文には続きがあって、診療所や助産所は病院に紛らわしい名称をつけてはいけません。
例えば、病院ではないものが「病院」、「病院分院」、「産院」、「療養所」、「診療所」、「医院」などと名乗ってはいけないということになります。
臨床研究中核病院(第4条の3)
これも新版で新しく記載されていました。
医療法の条文前編では、ここはスルーでみたいな記載をしていましたが、急いで若干修正しました。
条文自体は、医療法の条文前編に載せていますので、ここではポイントのみ。
臨床研究中核病院は革新的医薬品・医療機器などの開発を推進するために特定の国際水準の臨床研究などの中心的役割を担う病院です。
一定の条件を満たした上で、厚生労働大臣の許可を得て名乗ることができるようになります。
要件はいろいろありますが、病床400床以上、診療科10以上は覚えておきましょう。
医療法で規定する特別な病院類型として、臨床研究中核病院、地域医療支援病院、特定機能病院のそれぞれの特徴はしっかりと覚えておきましょう。
情報提供・安全確保
病院・診療所の広告
医療機関の広告については必ず出題されるだろうと予想していますが、医療経営士初級テキストの新版でも、多数の巻に渡って取り上げられています。
特に第2巻ではコラムとして3ページに渡り、新しい記載がなされています。
しかし、記載内容は当サイト内で扱っている内容以上のものではないので、広告の箇所はしっかり目を通しておいて、問題集で復習しておきましょう。
医療事故調査・支援センター(第6条の15-27)
「医療提供体制の仕組みを簡単にまとめてみた」で扱った医療事故調査・支援センターです。
簡単にまとめていたら、新版テキストの1/3ページくらいに新記載だったのでこちらで扱いました。
条文はかなり長くなってしまうので割愛してポイント記載です。
医療事故調査・支援センターは厚生労働大臣が指定します。
死亡事故などの医療事故が生じた場合に報告を受けるものですが、業務は下記になります。
- 病院・診療所等から提出された医療事故調査報告を整理・分析すること
- 病院・診療所等の管理者に対して、行った整理・分析を報告すること
- 病院・診療所等の管理者や遺族から依頼があった場合には、必要な調査を行い結果を報告すること
- 医療事故調査の従事者に対して、医療事故調査の知識・技能に関する研修を行うこと
- 医療事故調査の実施に関する相談に応じ、情報の提供・支援を行うこと
- 医療事故の再発防止に関する普及啓発を行うこと
医療事故調査・支援センターが調査を行うときに、医療機関は情報の説明や資料提出などを求められることがあるが、管理者はそれを拒否することはできません。
医療機関の開設・管理
病院・診療所の休止・廃止(第8条2-第9条)
これも医療法の条文前編でカットしたところでした…
2 病院、診療所又は助産所の開設者が、その病院、診療所又は助産所を休止したときは、十日以内に、都道府県知事に届け出なければならない。休止した病院、診療所又は助産所を再開したときも、同様とする。
2 病院、診療所又は助産所の開設者が死亡し、又は失そうの宣告を受けたときは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の規定による死亡又は失そうの届出義務者は、十日以内に、その旨をその所在地の都道府県知事に届け出なければならない。
ポイントとして医療機関は1年を超えて休めないこと、休止・再開・廃止時は10日以内に都道府県知事に届け出ることを覚えておきましょう。
人員基準の計算
医療関連法規における「常勤」や「常勤換算」についてまとめます。
常勤
ここでは医師1人の常勤、すなわち常勤医を考えます。
「1日8時間以上、週4日以上、週32時間以上同じ病院で働く場合」に常勤医になります。
上記は常勤医であるための最低条件ですが、一般的には常勤医は週5日は働いているのではないでしょうか。
そのため通常、常勤医1人は週35-40時間労働をする1人と考えられます。
(計算式がよくわかりませんでしたが、テキストでは週35-40時間と記載されています)
常勤換算
常勤換算とは「労働時間の合計を常勤1人分の労働時間に換算したもの」です。
例えば、週40時間労働の職場での常勤換算1人とはどういうことかを考えます。
常勤1人はもちろん常勤換算1人ですが、週20時間の労働者が2人でも常勤換算1人になります。
週20時間は週40時間の0.5分(20/40 = 0.5)だからですね。
さらにそこに週10時間の労働者が加わった場合は、週10時間は週40時間の0.25分なので(10/40 = 0.25)、常勤換算1.25人になります。
専従
診療報酬制度では「専従者」や「専従の医師」などといった表現があります。
専従とは、その業務のみに従事する者を指します。
例えば、専従業務に週30時間、他の業務に週10時間の労働を行う者は、専従としては0.75人(30/40 = 0.75)ということになります。
常勤専従
常勤と専従の組み合わせであり、常勤専従1人とは常勤かつ専従の条件を満たす者になります。
労働時間内に専従以外の業務を行うことができません。
医療提供体制
都道府県の責務(第30条の14-27)
ここも新版で新たに記載になったところです。
医療計画を実現するために都道府県が実施しなければいけない事項が医療法には定められていますが、主に以下のようなものがあります。
- 地域医療構想の達成を推進するための協議
- 医療従事者の勤務環境の改善を促進するための相談・助言、情報提供など
- 救急医療などの医療従事者確保のための施策の策定
- 医師確保のための調査・分析など
医療法人
医療法人の機関(第46条の2-8)
ここでは社団と財団について触れます。
社団とは
社団とは特定の目的のために複数の人が組織する団体に対して、法律が人格(法人格)を与えたものです。
言い換えると、「ある目的達成のために集まった人」でできた法人です。
構成員を「社員」と呼び、社員が一堂に会する場が「社員総会」です。
株式会社でいえば、株主が「社員」で株主総会が「社員総会」にあたり、実際の労働者は実は「社員」にはあたりません。
財団
財団とは、「ある目的達成のために集まった財産」に対して法人格が与えられたものです。
財産の運用管理を行うのが「評議員」であり、評議員が一堂に会する場が「評議員総会」になります。
医療法人社団と医療法人財団
医療法人社団は社員総会、理事、理事会、監事を置く必要があり、医療法人財団は評議員、評議員会、理事、理事会、監事を置く必要があります。
医療法人社団の議決権は社員1人に1票です。
医療法人財団の評議員は当該医療法人の理事・理事長・監事や職員はなることができません。
医療法人の会計(第51条52条54条)
ここは簡単に。
医療法人は毎年の会計年度終了後2か月以内に事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書などを作成する必要があり、会計年度終了後3か月以内に都道府県知事に届け出なければなりません。
また医療法人は剰余金の配当をすることはできません。
医療法人の解散と合併・分割
医療法人社団の解散事由などが新規記載されていますのでチェックしておきましょう。
シンプルにポイントだけを記載していきます。
医療法人の解散(第55条)
- 定款で定めた発生事由の発生
- 目的である業務の成功の不能
- 社員総会の決議
- 他の医療法人との合併
- 社員の欠乏
- 破産手続きの開始
- 設立認可の取り消し
医療法人の合併(第57-59条)
医療法人の合併には吸収合併と新設合併があります。
吸収合併:医療法人A + 医療法人B ⇒ 医療法人B(医療法人Aの権利義務を承継)
新設合併:医療法人A + 医療法人B ⇒ 医療法人C(医療法人AとBの権利義務を承継)
社団の場合は総社員の同意があれば合併でき、財団の場合は寄付行為に合併することができる旨が定められていれば合併できる。
また社団と財団の合併も可能である。
医療法人の分割(第60-61条)
医療法人の分割には吸収分割と新設分割があります。
吸収分割:医療法人A ⇒ 医療法人A + 医療法人B(元からある医療法人)
新設分割:医療法人A ⇒ 医療法人A + 医療法人C(新設の医療法人)
社団の吸収分割は総社員の同意を得なければならず、財団の吸収分割は理事の三分の二以上の同意を得なければならない。
吸収分割は都道府県知事の認可を受ける必要があります。
第7次医療法改正で医療法人の分割について規定されましたが、社会医療法人と特定医療法人は対象から除外されています。
地域医療連携推進法人
地域医療連携推進法人についてもほぼ新規記載で、約1ページにわたっています。
試験で問われそうな気がしますが、ここは「医療法関連」のページと当サイト問題集をやっておきましょう。
さてここまでが、概ね医療法関連での新たなチェック項目になります。
次は医療従事者関連についてみていきます。
医療従事者に関する法規
医療従事者に関する法規とは、医師法とか薬剤師法とかのことです。
「医療従事者に関する法規を簡単にまとめてみた。」で取り上げていますので、基本はそちらを見ていただくとして、新版テキストでポイントとなりそうな部分をまとめていきます。
まずは「公認心理師法」が新規に記載されています。
公認心理師とは、2017年に新設された国家資格であり、厚生労働大臣が行う公認審理師試験に合格し公認心理師名簿に登録して、心理に関する業を行います。
心理に関する業とは、心理に関する支援を要する者について、「心理状態の観察・分析」、「助言・指導」、「関係者に対する助言・指導」、「知識の普及を図るための教育・情報提供」などを指しています。
ただし、社会福祉士や介護福祉士、精神保健福祉士などと同様に、この資格を有しなくても類似の業務を行うことができます。
医師法の医師免許を与えない項目(第2-8条)
新規掲載なので一応記載しますが、特に覚えなくても感覚でわかる気がします。
ここからも新たなポイントだけをシンプルにみていきます。
- 心身の障害で医師業務を適正に行うことができない者
- 麻薬・大麻などの中毒者
- 罰金以上の刑に処せられた者
- その他、医事に関して犯罪・不正の行為があった者
まぁそりゃそうだよなという内容ですね。
保健師助産師看護師法
改めてですが、保健師、助産師、看護師、准看護師の4職種を併せて「看護職員」といいます。
看護職員に、資格を要しない看護補助者を加えたものを「看護要員」といいます。
看護師は、昔は「看護婦」と呼ばれることが多かったですが、男性看護師も増えたこともあり現在は「看護師」となっていますね。
ちなみに助産師は「女子」に限ります。
このカテゴリーでは看護師と准看護師の違いが一つのポイントです。
それぞれ免許を厚生労働大臣、都道府県知事からいただくことはもういいとして、定義について見直してみます。
看護師:厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者(患者)等に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者
准看護師:都道府県知事の免許を受けて、医師・看護師等の指示の下で傷病者(患者)等に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者
何故かはわかりませんが、医療経営士テキストの新版では、准看護師の説明の中で「医師・看護師等の指示の下で」という文言が強調されていました。
看護職員の業務
ここは旧版テキストから1ページ分程度、記載が増えました。
簡単にまとめていきます。
保健師・助産師の業務
保健師・助産師は看護師国家試験のみならず、それぞれ保健師国家試験・助産師国家試験に合格した者です。
そのため保健師・助産師は看護師の業務も行うことができるのでしたね。
ではまずは保健師から看護師よりも何ができるかをみてみます。
保健師の業務は、ずばり「保健指導」です。
保健指導とは、健康な人を含めた全ての人に対する健康教育や指導などを意味しており、保健師は保健指導を通じて疾病の予防や健康増進などの公衆衛生を担う専門職とされています。
看護師の業務は「傷病者等」に対するものですが、保健師は健康な人に対しても業務を行うのですね。
そして看護師は概ね医療機関で仕事をしていますが、保健師は保健所や企業・学校など、保健指導ができるところで仕事をしていることが多いです。
次に助産師ですが、助産師の業務は「助産および妊婦・褥婦(じょくふ:分娩の終了から妊娠前の状態に戻るまでの期間の女性)・新生児の保健指導」になります。
正常分娩であれば、医師の直接の指示がなくても出産に携わることができます。
また、妊婦・褥婦・新生児に限られるものの、傷病者ではない者に保健指導を行うことができます。
看護師・准看護師の業務
改めてですが、看護師・准看護師の業務は「傷病者(患者)に対して療養上の世話および診療の補助を行う」ことです。
看護師・准看護師はともに上記内容を行いますが、准看護師は「医師・看護師等の指示の下で」という限定句があることを再度述べておきます。
業務とは内容が離れてしまいますが、「医療関連法規で看護師と書かれている場合は准看護師を含まない」ことに注意が必要です。
例えば、「看護師比率」といった基準は「看護職員数に対する看護師の割合」ですが、准看護師は看護職員ではあるものの看護師ではないため、計算を間違わないようにしなければなりません。
医療機関の現場では看護師を「正看(せいかん)」、准看護師を「准看(じゅんかん)」と呼ぶこともあります。
さて、ここからは健康保険関連のお話しなります。
新テキストで新たに扱われるようになっている内容が中心ですので、各項目にあまりまとまりがないことは引き続きご容赦ください。
健康保険の被保険者の資格喪失の時期について
資格喪失の前に、そもそもいつ資格を取得するかというと、適用事業所に使用された日、または使用される事業所が適用事業所のなった日に被保険者の資格を有することになります。
では次に資格喪失の時期についてです。
被保険者は、退職や死亡、使用される事業所が適合事業所でなくなった日の翌日に被保険者の資格を喪失します。
被保険者が退職直後に別の企業などに就職していれば、新たに被保険者となることができます。
一方で、定年退職などの場合を考えます。
定年退職後に保険給付を受ける方法としては3つあります。
一つ目は、定年退職後も一定の要件に該当した場合、被保険者本人の申し出で一定の保険料を払い続けることにより従来の保険給付を受け続ける方法です。
二つ目は、新たに国民健康保険に加入する方法です。国民健康保険は無職者でも加入可能です。
三つ目は、配偶者や子、その他の家族がほかの健康保険の被保険者である場合、その者の非扶養者として保険給付を受ける方法です。
医療機関は、健康保険の資格を喪失した方の医療費の保険請求を行っても当然医療費は支払われないため、常に最新の健康保険証を確認することが未収金を発生させないためにも大切です。
病院・診療所などの開設と2つの手続き・行政監督
これはテキストではコラムとして扱われていますが、約1ページ使用され気になる文言もあったため簡単に解説します。
さて、新たなに医療機関や薬局を開設するときには行政手続きが概ね2つ必要です。
1つは保健所を通して都道府県知事に、もう1つは地方厚生局を通して厚生労働大臣にです。
まずは「医療」を行うためには医療法に基づく開設の許可・届出が必要になるため、所轄の保健所を通して都道府県知事より「医療」を提供することを認めてもらわなければなりません。
その結果、医療法に基づく保健所による監督を受け、医療法が規定する医療情報や医療安全確保、施設設備の状況などが調査・確認されることになります。
次に多くの医療機関は保険診療を行うため、地方厚生局を通じた厚生労働大臣による保健医療機関・保険薬局の指定です。
この指定がなければ、そこで提供される医療が「保険給付」の対象となりません。
言い換えると、保険診療を全く行わない医療機関(例:美容整形、美容皮膚など)であれば、保険医療機関・保険薬局の指定は必要ありません。
保険医療機関・保険薬局の指定を受けた結果、健康保険法に基づく地方厚生局による監督で、主に健康保険法が規定する療養の給付、その他の保険給付について、診療報酬を請求する要件(例:人員、設備、運営、診療報酬請求の状況)などが調査・確認されることになります。
上記の流れをつかんだ上で、ここでは「医療法=保健所」、「健康保険法=地方厚生局」を覚えておきましょう。
保険給付に関する国保と健保の違い
テキストの国民健康保険法の中で、新しい記載となった保険給付についてです。
まずは国民健康保険の保険給付の種類を見てみましょう。
- 療養の給付
- 入院時食事療養費
- 入院時生活療養費
- 保険外併用療養費
- 療養費
- 訪問看護療養費
- 移送費
- 高額療養費
- 高額介護合算療養費
「療養の給付」とか「療養費」って何?ということころまではつっこむ必要はないでしょう。
それぞれについては国民健康保険法の第36条や第52-57条あたりで説明されていますが、条文はテキストでも扱われていません。
ここでポイントとなるのは健康保険との違いです。
健康保険との違いは「家族療養費」、「家族訪問看護療養費」、「家族移送費」がないことです。
国民健康保険には被扶養者という扱いがないからですね。
また、健康保険では給付対象となる「労働不可能となったときの生活保障」としての「傷病手当金」や「出産手当金」について、国民健康保険は被用者を対象としないため、保険給付の対象外となっています。
一部負担金の不払い問題
次は不払い問題についてです。
発生して不払いについて、民法上は患者は医療費を支払う義務があることから、訴訟などの法的手段を講じれば解決することにはなります。
ポイントは2つです。
1つは請求には時効があるということです。
医療費の場合は、その支払い義務が生じたあと、最後に催告した日から3年になっています。(2020年4月からは5年に延長予定)
最後に催告した日からなので、支払い義務が発生したとき以降も、定期的に支払いを催告することで時効を延長することができます。
どうしても支払ってくれない場合は、裁判所を通じて強制的に回収することは可能です。
その手続きは民事訴訟法という法律に定められています。
しかし、現実的には訴訟などは大変であり、「〇月〇日までに支払いがなければ法的手段をとります」などの内容を通告することで解決することも多くあります。
患者の個人情報保護
ここは昨今の個人情報保護の問題を考慮して、新版テキストで追加となったと考えます。
ポイントは2003年に個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が制定されていることと、医療機関では患者の個人情報は利用目的を可能な限り限定しなければならないということですね。
利用目的は院内掲示などで公表しておくか、本人に通知しなければならないとされています。
また、同法では個人情報は本人の同意を得ずに第三者に提供してはならないともしています。
患者の家族や職場の関係者も基本的には第三者となることや、他院も第三者となるため、患者紹介のための情報提供時でも本人の同意が必要となることには注意が必要です。
ただし「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」は除外されるため、本人の同意がなくとも第三者への情報提供が可能になります。
労働者の安全と健康の確保
さて「医療法関連法規」の最後になります。
ここでは労働安全衛生法により使用者が行うべき労働災害防止のための最低基準が定められていること押さえておきましょう。
具体的な内容はいろいろありますが、健康保持のために使用者は労働者の健康診断を行わなければいけないことを覚えておきましょう。
健康診断は雇入れ時および年1回以上行われる必要があります。
特に放射線業務や深夜業務などに携わる「特定業務従事者」は6か月に1回以上行わなければいけないことは覚えておきましょう。
医療機関としては、日勤のみの看護要員や事務職員は年1回、放射線を扱う医師・放射線技師や夜勤のある看護要員や事務職員は年2回の健康診断が義務付けられています。
また、2015年から常時50人以上の労働者を使用している事業所では医師・保健師によるストレスチェックの実施も義務づけられています。(50人未満であれば努力義務)
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本ページはここまでです。
続きは、その弐へどうぞ。
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【新版考察】初級医療経営士テキスト:その弐
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