こんにちは。
医療経営士試験の勉強は順調ですか?
さて今回は「病棟・病床」についてまとめていきます。
医療経営士3級試験でも基本的知識として出題される可能性は高いので、それぞれの病棟の違いを押さえながらポイントを整理していきましょう。
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目次
病棟と病床
病床は患者が使用する入院ベッドそのものを意味したり、ベッドを使用する患者がどのような状態なのかを表したりします。
例えば、
といった場合では、「病床=ベッド」になっています。
そして、
といった場合は、「病床=患者の状態」(この場合、患者は結核患者だとわかる)を表していますね。
一方で病棟はどうでしょうか。
病棟とは病床が集まることによって形成される看護体制の1単位です。
病棟は機能的に分けられていて、後述するように回復期リハビリテーション病棟、療養病棟のように分類があります。
それらの分類とは別に、病院では各診療科ごとに病床をフロア単位で管理し、「4階西病棟は呼吸器科」、「5階東病棟は消化器外科」などのようにしていることも多いです。
各診療科毎に看護体制が異なることが多いためですが、この場合「病棟」は「診療科のフロア」を意味していることになります。
1病棟の病床数は原則60床以下となっています。
病床区分
病床は前述した「結核病床」のように患者の状態に合わせての区別がなされています。
その区分は医療法第7条第2項第1号から第5号までにおいて 次のように定義されています。
- 精神病床
- 感染症病床
- 結核病床
- 療養病床
- 一般病床
この中で、精神病床は精神疾患の患者、結核病床は結核の患者を入院させる病床ということは問題ないでしょう。
感染症病床とは結核以外にも、他人への感染拡大率や重症になりやすいかなどの要素から、隔離して扱うことが望ましいとされる感染症の患者を入院させる病床です。
感染症といっても限りなくありますが、厚生労働省はそれらのリスクに合わせて一類感染症から五類感染症に分類しています。
最もリスクが高いものが一類感染症になり、一類感染症と二類感染症が感染症病床に入院となります。
さらに種々の要素から感染症病床に入院させることが妥当と考えられる指定感染症というものが、状況によって指定されます。
エボラ出血熱は人から人へ感染してしまうので感染症病床、デング熱は人から人へは感染しないため(蚊が感染を広げる)、非感染症病床ということですね。
どの感染症が何類で感染症病床入院が必要かなどは、間違っても医療経営士3級試験には出ませんが、興味がある人は厚生労働省のページにまとめられていますので、クリックしてみてください。
次に療養病床ですが、精神病床、結核病床、感染症病床に該当しない患者が長期に療養をするために入院させる病床です。
療養病床については昨今問題になっています。
療養に関する問題については介護医療院のページで若干記載していますので、読んでみてください。
最後に一般病床ですが、前述の病床以外の患者を入院させる病床になります。
普通に入院といえば一般病床ということになりますね。
各病床の人員配置基準
これは医療経営士試験での出題ポイントなので是非ともおさえておきましょう。
まずは以下の表を見てみましょう。
いろいろと記載されていますが、ここで重要となるのは医師の配置基準です。
各病床に対して医師の配置は基本的には16:1、療養病床と大学病院等以外の精神病床は48:1ということは覚えておきましょう。
つまり32床の病院では医師2人が必要になります。
40床では医師3人が必要になり、200床では医師13人が必要になるということです。
また病床とは関係ないですが外来では医師配置40:1ということは重要ですのでこちらも覚えておきましょう。
病棟の分類
さて、ここからは病棟についてみていきます。
患者の状態などによって受け入れる病棟は変わりますが、どのような患者を主に受け入れているかで診療報酬上の扱いが変わります。
初めに、診療報酬上での病棟の分類を見ておきましょう。
平成30年度診療報酬改定時の厚生労働省のコメントも記載しておきます。
診療報酬上の病棟分類
- 一般病棟入院基本料:一般病棟入院基本料(7対1、10対1、13対1、15対1)について再編・統合し、新たに、急性期一般入院基本料、地域一般入院基本料とする。また、急性期一般入院基本料の段階的な評価については、現行の7対1一般病棟と 10対1一般病棟との中間の評価を設定する。
- 地域包括ケア病棟入院料:基本的な評価部分と在宅医療の提供等の診療実績に係る実績部分とを組み合わせた体系に見直すとともに、在宅医療や介護サービスの提供等の地域で求められる多様な役割・機能を果たしている医療機関を評価する。
- 回復期リハビリテーション病棟入院料:回復期リハビリテーション病棟入院料の評価体系にリハビリテーションの実績指数(回復期リハビリテーション病棟における1日あたりのFIM得点の改善度を、患者の入棟時の状態を踏まえて指数化したもの)を組み込む。
- 療養病棟入院基本料:20対1看護職員配置を要件とした療養病棟入院料に一本化することとし、医療区分2・3の該当患者割合に応じた2段階の評価に見直す。
各病棟は患者に提供する医療内容に違いがありますが、診療報酬上では看護配置や患者の重症度、平均在院日数や在宅復帰率などによって診療報酬に違いがあります。
手厚い看護配置や、重症の患者を多く引き受けていることなどの実績が評価されることになります。
イメージのために看護配置について比較すると以下の表のようになります。
看護配置 | |
急性期一般入院料 | 7~10:1以上 |
地域一般入院料 | 13~15:1以上 |
地域包括ケア病棟入院料 | 13:1以上 |
回復期リハ病棟入院料 | 13~15:1以上 |
療養病棟入院料 | 20:1以上 |
例えば、急性期一般入院料には入院料1から入院料7まで細分化されています。
その中で入院料1を算定するためには看護配置7:1以上が必要になります。
一方で入院料7を算定するためには10:1以上ですみます。
この当りの細かな内容は医療経営士試験で問われることはないと考えますが、後程もう少し詳しく解説いたします。
改めて各病棟のイメージを下図に示します。
この図の急性期医療に当たるのが急性期一般病棟、急性期~長期療養の13~15:1に当たるのが地域一般病棟になります。
ついでにいうと棒グラフの下の部分が「基本的な評価部分」、棒グラフの上に階段上に積み重なっている部分が「診療実績の評価部分」という二段階に分けられた診療報酬システムになっていることがわかります。
急性期一般病棟
さてここからは各病棟についてみていきます。
病棟に関しては、診療報酬上の評価も踏まえて押さえていきます。
まずは病棟の中でも基本となる急性期一般病棟からみていきましょう。
急性期一般病棟では主に急性期医療が行われます。
急性期医療を簡単にいうと、患者に今まさに起こっている疾患を治療する医療です。
急性期一般病棟は主に急性期医療なのですが、一口に急性期医療といっても患者さんの程度には大きな幅があります。
例えば、肺炎でも軽症から重症までありますね。
また、糖尿病の悪化といっても「元気で内服も問題ない中年者」と、「腎機能障害などを合併する弱った高齢者」では当然医療の必要度が変わってきます。
一般的に重症な患者の方が医療の必要度が高いため、費用もかかります。
そのため診療報酬では、急性期医療を手厚く行うために看護師がしっかり配置されていたり、より重症な患者を引き受けていたりする病棟に対して、診療報酬が高くなるように設定されています。
今までの医療経営士3級・2級試験の傾向からは、この表の数字などを細かく覚える必要はないと考えます。
実務ではもちろん必要ですが、試験対策としては急性期一般入院基本料は6段階に分かれていること、看護配置や重症度・看護必要度、平均在院日数、在宅復帰率などで区別されていることをおさえるといいのではないかと考えます。
地域一般入院病棟
続いては地域一般入院病棟です。
地域一般入院病棟も一般病棟に含まれるのですが、急性期一般病棟とは何が違うのでしょうか。
急性期一般病棟は、救急搬送の受け入れなど一般的な急性期疾患を扱っており、そこには外科手術症例なども含みます。
一方で地域一般入院病棟は、軽症急性疾患患者の受け入れ、地域の在宅医療・介護保険施設や急性期病棟からの亜急性患者の受け入れなどを主としています。
そのため急性期一般病棟よりも看護配置や平均在院日数に余裕があるのですね。
地域包括ケア病棟
次は地域包括ケア病棟です。
まず、地域包括ケア病棟の役割は3つあります。
- 急性期治療を経過した患者の受け入れ
- 在宅療養を行っている患者の受け入れ
- 在宅復帰支援
地域一般入院基本料1 | 地域包括ケア病棟入院料4 |
1,159点 | 2,076点 |
地域一般入院基本料の最も高い点数と、地域包括ケア病棟入院料の最も低い点数を比較していますが、地域包括ケア病棟入院料の方が高い診療報酬が設定されています。
地域一般入院と地域包括ケア病棟入院では「軽症の急性期患者の受け入れ」や「在宅療養患者の受け入れ」など、機能面で似ている要素がありますが、診療報酬点数が明らかに異なるのは何故でしょうか。
まず地域一般病棟と地域包括ケア病棟では算定できる要件が大きく異なります。
平成30年度診療報酬改訂において明確になっていますが、国の方針として地域包括ケア病棟のようなことを推し進めていきたいという表れですね。
そのため地域包括ケア病棟の要件を満たしている病棟には診療報酬点数を高くつけて、評価しますとなっているわけです。
それでは、地域包括ケア病棟入院料の算定要件をみてみましょう。
地域一般入院基本料と比較すると、リハビリ専門職が必要であること、看護職員配置は13:1以上が必要で15:1では算定できないこと、入院料1・2は在宅復帰率が7割以上であることなど、細かく要件が指定されています。
その分だけ診療報酬は高く設定されているのですね。
地域包括ケア病棟の診療報酬点数は高いのですが、それは60日までです。
60日を過ぎると特別入院基本料の584点となり、かなりの減算になります。
地域包括ケア病棟は平均在院日数などの施設基準はありませんが、算定上限日数を考えると、いかに60日以内に退院にもっていけるかどうかが重要なポイントになります。
回復期リハビリテーション病棟
次は回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)です。
回復期リハ病棟の目的は、その名の通り「リハビリテーションを行うことで心身ともに回復し自宅や社会へ戻る」ことです。
地域包括ケア病棟でもリハビリ専門職が必要でしたが、回復期リハ病棟は各病棟の中で最もリハビリに力を入れる病棟になります。
そのため算定要件をみてもリハビリ専門職の人数などは地域包括ケア病棟よりも厳しくなっています。
リハビリテーション実績指数とは移動・移乗・排泄・セルフケア(食事・更衣・清拭など)からなる運動項目と、コミュニケーション(理解・表出)・社会認識(記憶・問題解決・社会的交流)などからなる認知項目について、リハビリによる改善効果を点数化するものです。
指数の算出にはFIM(Functional Independence Measure)という評価法が用いられます。
これらの項目を自立に近づけるほど点数が高くなり、リハビリの実績として評価されることなります。
最も診療報酬点数の高い入院料1は実績指数40以上が必要となっています。
さて、回復期リハ病棟もそれなりに診療報酬点数がつけられていますが日数制限などはないのでしょうか。
回復期リハ病棟の目的を考えると、そもそも退院までの状態に回復するのが難しい方などは向きませんね。
そこで回復期リハ病棟には入院できる条件としての疾患や状態、算定上限日数が定められています。
疾患・状態 | 算定上限日数 | |
(1) | 脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症又は手術後、義肢装着訓練を要する状態 | 150日以内 |
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頚髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷 | 180日以内 | |
(2) | 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折又は二肢以上の多発骨折の発症後又は手術後の状態 | 90日以内 |
(3) | 外科手術又は肺炎等の治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後または発症後の状態 | 90日以内 |
(4) | 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は靱帯損傷後の状態 | 60日以内 |
(5) | 股関節又は膝関節の置換術後の状態 | 60日以内 |
(6) | 急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患、又は手術後の状態 | 90日以内 |
算定上限日数内にいかに退院できる状態に回復させるかが重要になってきます。
回復期リハ病棟の入院料1-4を算定するためには在宅復帰率が7割以上という要件があります。
回復期リハ病棟の目的は自宅や社会に戻るということなので、在宅復帰が全然できない病棟は回復期リハ病棟の算定はできませんよということですね。
要件を算定するのが大変という考え方もありますが、リハビリをしっかりと行って在宅に復帰させている病棟を報酬できちんと評価するということにも繋がっています。
療養病棟
さて病棟の最後は療養病棟です。
療養病棟は病院で扱っている病床なので、ここでは医療療養病床になります。
ややこしいですが療養病床といえば、医療療養病床と介護療養病床がありました。
そして介護療養病床は今後なくなる方針で、介護医療院などに移行していることは再度確認しておきましょう。
療養病棟はその名の通り療養が行われます。
療養というと生活の質を高めるようなことを中心とした、いわゆる介護的な要素が加わってきますが、療養病棟では施設と異なり医療の必要性が高い方が対象となります。
長期療養に対するサービス提供類型のイメージをみてみましょう。
療養病棟は人工呼吸器や中心静脈栄養などの医療ニーズが高い方に対応しているのですね。
療養病棟では長期入院となることが予想されますが、人工呼吸器管理などの特殊性から入院期間に対する診療報酬上の算定上限日数はありません。
療養病棟入院料は次のようになっています。
病床機能報告制度と地域医療構想
病床機能報告制度とは、各医療機関が病床機能を都道府県に報告することで、地域の医療の現状と将来の展望を検討できるようにした制度で、第6次医療法改正で制定されました。(医療法関連参照)
ここでいう病床機能とは、高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能であり、病棟が担う医療機能のいずれか1つ選択して報告することとなっています。
そして報告を受けた都道府県は、各医療機関の病床機能を住民に公表することになります。
各都道府県では病床機能報告をもとに地域医療構想を策定します。
地域医療構想の策定とは、病床必要数など将来の医療提供体制を関する事項を決定していくことですね。
例えば病床機能報告をまとめた結果、急性期機能は過剰で回復期機能が不足となっていた場合に、そのバランスをとっていくように医療機関に働きかけることなどがあります。
ちなみに地域医療構想を検討する会議を調整会議といいます。
調整会議で病床数の検討などが行われた結果、下図のような未報告病床数や非稼働病床数などのデータがでてくることになります。
病床の効率化を図るために、非稼働病床が再稼働する際には病床機能が過剰にならないようにしなければなりません。
非稼働病床となっている病棟がある医療機関は、調整会議への出席と非稼働となっている理由の説明などが求められることになります。
平成30年3月末時点での都道府県別の非稼働病棟の病床数は、北海道が最も多く、次いで神奈川県、茨城県の順になっています。
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本ページは以上です。
病棟・病床のイメージができたでしょうか。
それでは、また次の記事でお会いしましょう!