医療経営士3級試験の勉強は順調ですか?
さて今回は…
医療経営士3級対策!
医療従事者に関する法規
についてまとめてみました。
「これから医療経営士試験勉強を始めようと思ってました!」
「まとめシリーズ待ってました!」
「ケッ、しょうがねぇから読んでやるか」
というような方、このページで医療従事者に関係する法規について学んでいきましょう。
初級医療経営士テキスト第3巻で扱っている内容ですが、テキストでも多くを記載されてはいませんので、ここはさらっと学べばよいかと思います。
目次
医師法
医師国家試験
さて、「医師」とは何をしている職業か知らない方はいないかと思います。
病院に行き診察を受ける際にお会いするのが医師ですね。
目次にあるように医療従事者といっても多くのスタッフがいるのですが、患者さんの診断・治療の決定権を持つのは医師であり、様々な職種からなるチーム医療の中心といえる職業です。
ということで誰でも簡単に医師になれるわけではありません。
医師になるためには大学の医学部や医大で教育を受けた後に医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければなりません。
この医師国家試験の合格率は90%程度で推移しています。
もしかすると国家試験よりも受験資格を得るために医学部や医大に合格することの方が大変かもしれませんね。
臨床研修制度
医師国家試験に合格した後は厚生労働大臣指定の病院で2年以上の臨床研修を受けなればいけないことになっています。
医学部を卒業し医師国家試験に合格した後も、まだ好きな科で医師ができるわけではなく2年間の研修を行うわけです。
僕は早く好きなことしたいな。
この卒後2年の臨床研修制度は以前から存在していましたが、努力義務にとどまっていました。
それが2000年の第4次医療法改正で必修化され、2004年度から実施されたのでしたね。
現在の臨床研修制度は「スーパーローテート方式」といって、内科や救急、地域医療(イメージとしては田舎での医療)など様々な科で研修を受けなければならないシステムになっています。
自分の専門科以外でも最低限は診療するという背景には、救急患者の受け入れ先がないという患者のたらい回し問題などがあります。
現在の「スーパーローテート方式」の研修が必修化される前は、医師国家試験合格後に専門科を決めてキャリアをスタートする医師が多くいました。
例えば眼科医志望であれば、医師1年目から眼科医として経験を積んでいったわけですね。
その結果、眼科専門医となり眼についてはプロフェッショナルではあるものの腹痛の救急患者は苦手…という状態が起こりえます。
診療の結果、患者にとってよくない結果になった場合に、医師は専門外であっても訴えられるかもしれません。
そう考えると専門外の救急患者の受け入れに対してハードルが高くなってしまいますね。
上記の眼科医の話はあくまで例えですが、専門外を診療することの多い救急診療を考えた場合には「専門に特化するシステムのみではまずい」と考えられたわけです。
そこで「最初は内科や救急、地域医療の経験を積んで、将来どの科に進むにせよ救急含めて幅広く診療してね」という臨床研修制度が必修化されました。
具体的には令和2年度から、医師1年目は内科24週、救急12週、外科・小児科・産婦人科・精神科・地域医療がそれぞれ4週の7科目必修になっています。
医師の義務と禁止事項
ここで大切なことは、医師には応招義務というものがあるということです。
応招義務をもう少し詳しく説明すると、「患者から診察・治療の求めがあった場合は、正当な理由がなければ診療を拒否できない」となります。
正当な理由とは、医師本人の不在や病気、当該医師の専門外で他の医師が診療可能、他患者の対応で新患に対応できない、などです。
しかしながら、医師の働き方改革にもみられるように応招義務についても見直しがなされています。
2019年12月の見直しでは『応招義務は医師や歯科医師が国に対して負う義務であり、患者に対する私法上の義務でない』とされ、患者を診察しないことが正当化されるか否かは、緊急対応が必要か不要か、診療・勤務時間内か時間外かの4パターンに分けて整理されました。
緊急性あり | 緊急性なし | |
時間内 | 医療機関・医師の専門性・診察能力等を総合的に判断して「事実上診療が不可能と言える場合」にのみ正当化される | 原則として、患者の求めに応じて必要な医療を提供する必要がある。ただし、緊急対応の必要がある場合に比べて、医療機関・医師の専門性・診察能力、設備状況、他の医療機関等による医療提供の可能性や患者との信頼関係等も考慮して緩やかに解釈される。 |
時間外 | 応急的に必要な処置をとることが望ましいが、原則、公法上・私法上の責任に問われることはない | 即座に対応する必要はなく、診療しないことは正当化される。ただし、時間内の受診依頼、他の診察可能な医療機関の紹介等の対応をとることが望ましい |
参照:[PDF]応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について-厚生労働省
他の医師の義務としては、診療したときは遅滞なく診療録(カルテ)に記載し診療録は5年間保存することになっています。
一方で、診察なしでは治療・処方をしてはいけないことになっています。
診察なしでの処方とは、例えば高血圧で通院している状態の安定した患者さんが、待ち時間が長いことなどから、医師に会わずに薬だけ処方を受けるというようなことです。
薬剤師法
薬剤師とは薬の調剤や供給を行うことができる職種で、お薬のプロフェッショナルですね。
大学の薬学部などで教育を受けた後に薬剤師国家試験に合格して、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。
薬剤師国家試験の合格率はここ数年は70%前後のようです。
薬剤師は、患者から調剤の求めがあった際には、正当な理由がなければ拒否することができません。
原則として薬局以外で調剤してはいけませんが、在宅診療の際に患者の居宅で調剤することや、病院・診療所の調剤所で調剤することは認められるなどの例外もあります。
また、調剤には医師・歯科医師の処方箋が必要であり、その処方箋に疑わしい点があるときは処方医に照会しなければなりません。
例えば医師が、薬剤間で飲み合わせが悪い処方をしていたり、用法用量に間違いがあったりといった場合に、「本当にこれでよいですか?」と医師に聞くことができます。というか聞かなればなりません。
この照会のことを疑義照会といいます。
調剤した薬剤に対しては、薬剤の容器・被包に処方箋に記載された患者氏名・用法用量などを記載する必要があり、処方箋に必要な事項(調剤年月日等)は3年間保存しなければなりません。
保健師助産師看護師法
保健師助産師看護師法は、読んで字のごとく保健師、助産師、看護師、准看護師についての法律です。
看護職員の法規については初級医療経営士テキストでも扱いは少ないので、要点を記載します。
上記4つの職種の中で保健師、助産師、看護師は厚生労働大臣の免許を受けますが、准看護師は都道府県知事から免許を受けます。
保健師、助産師は看護師の国家試験にも合格している必要があり、看護業務も行うことができます。
看護師に関しては、医師や歯科医師の判断を待たずに手順書に基づいて、一定の診療の補助(特定行為)を行うことができるようになる研修制度が始まりました。
これまでは、特定行為が必要時には医師の指示を受けないとできなかったのですが、医師があらかじめ用意した指示が記載されている手順書があれば、医師に連絡をしなくても手順書に従って特定行為を行うことができるようになりました。
入院中の患者の容態は変化することがありますが、医師が起こりうる変化を予想して、そうなったときの具体的な対応を記載しておくものが手順書になります。
この手順書の範囲内であれば、看護師も医師に連絡をせずとも特定行為が行えるため、迅速に処置が行えるようになります。
医師に電話をするが繋がらない、夜中に電話をするのはためらわれる、などの看護師のわずらわしさも軽減し、一方で医師も手順書に記載するような予測の範囲内の対応頻度が減るため負担が軽減されることが期待できます。
<クリックで拡大します>
[PDF]特定行為に関する看護師の研修制度が始まります-厚生労働省より一部引用
その他
ここからは以下の職種について簡単なまとめです。
診療放射線技師法
診療放射線技師は厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の下で、人体に放射線を照射することができます。
そして、人体に放射線を照射できるのは、医師・歯科医師と診療放射線技師のみです。
放射線の内容まで覚える必要ありませんが、一応列挙します。
- アルファ線(α線)、ベータ線(β線)
- ガンマ線(γ線)
- 100万電子ボルト以上の電子線
- エックス線(X線)
- 陽子線など政令で定めるもの
実際の臨床の現場ではエックス線(X線)の照射頻度が多いと考えられます。
他にもX線を使う検査や治療があります。
X線を使用する検査・治療にはレントゲン写真、CT検査、胃バリウム検査や心臓カテーテル検査時になどがあります。
これらの検査時にX線を照射しているのは診療放射線技師が多いです。
臨床検査技師等に関する法律
臨床検査技師は厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の下で、超音波検査などの各種検査をすることができます。
- 微生物学的検査
- 血清学的検査
- 血液学的検査
- 病理学的検査
- 寄生虫学的検査
- 生化学的検査
- 生理学的検査(心電図、超音波など)
一つ一つの検査内容を覚える必要はないでしょう。
臨床検査技師は患者から採取された血液や、細菌感染を評価する検体などを、機械を使ったり自分の眼で見たりして検査を行うことができます。
患者さんから検体を採取するのは主に医師や看護師です。
また心電図や脳波、超音波検査など、人体への影響が少ないと考えられる検査も行うことができます。
理学療法士及び作業療法士法
理学療法士(PT:Physical Therapist)と作業療法士(OT:Occupational Therapist)は厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の元、理学療法や作業療法ができます。
理学療法とは、起き上がる、座っている、歩くなどの基本動作の回復・維持・悪化予防を目的としたリハビリテーションです。
作業療法とは、食事、スポーツ、遊びなどを通して応用動作と社会適応のための能力回復を目的としたリハビリテーションです。
ここからは一気にいきますね。
栄養士法
栄養士、管理栄養士はともに栄養食事指導を行うことができる職種ですが、栄養士は都道府県知事の免許、管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受けるという違いがあります。
医療機関では食事栄養指導がなされることがありますが、その行為に対して診療報酬の請求ができるのは管理栄養士が行った場合のみです。
また管理栄養士は医療機関での栄養サポートチーム(NST:Nutrition Support Team)に参加することができます。
医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などの様々な職種から構成される医療チームで、栄養状態が悪い患者さんを対象に、全身状態の改善を目指すことを目的として適切な栄養管理を行う。
社会福祉士及び介護福祉士
社会福祉士、介護福祉士はともに厚生労働大臣が行う試験に合格し、厚生労働省令に定める名簿に登録されています。
社会福祉士は心身の障害等により日常生活に支障のある者に対して、福祉に関する相談に応じ援助を行っています。
介護福祉士は心身の障害等により日常生活に支障のある者に対して、介護に関する支援・指導を行っています。
病院・診療所や介護施設・介護サービス事業者などで、患者や患者家族の相談、支援、介護などは、社会福祉士や介護福祉士の資格がない者でも似たような業務を行うことができます。
精神保健福祉士法
精神保健福祉士は厚生労働大臣が行う試験に合格し、厚生労働省令に定める名簿に登録して、精神障害のある者の相談に応じ、助言、指導、援助などを行います。
精神保健福祉士も資格がない者でも、似たような業務を行うことができます。
言語聴覚士法
言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)は厚生労働大臣の免許を受けて、音声・言語・聴覚に障害がある者に対して、機能の維持・向上のための訓練、助言、指導、援助などを行うことができます。
嚥下障害を有し、経口摂取が困難な方に対して嚥下機能の検査やリハビリテーションも行っています。
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