医療経営士とは
医療経営士に興味を持っていただき、ありがとうございます!
昨今、医療関連業界でなにかと話題の医療経営士。
今回は医療経営士とは何か、医療経営士になるメリット・デメリットについて解説していきます。
- 医療経営士って何?
- 役に立つのか?
- 具体的なメリットは?
- 具体的なデメリットは?
医療経営士って何?
医療経営士は一般社団法人 日本医療経営実践協会が認定している民間資格です。
同協会が開催する医療経営士試験に合格し、協会に入会・登録することで「医療経営士」を名乗ることができるようになります。
合格すると2級、1級と上級資格に挑戦できるようになります。
次に医療経営士とは何か?ということですが、同協会のホームページには下記の記載があります。
医療経営士とは
医療機関をマネジメントする上で必要な医療および経営に関する知識と、経営課題を解決する能力を有し、実践的な経営能力を備えた人材です。
長らく“経営不在”と指摘されてきた医療界において、「医療経営士」は、これからの医療現場を担う重要な人材と位置づけられます。日本医療経営実践協会-概要-より引用
簡単にまとめると、医療機関は経営が得意ではないので、医療機関の経営を担う人材として医療経営の勉強をしましょうということですね。
そして、勉強している人としてない人の差別化を図り、勉強するモチベーションにもつなげようということで「医療経営士」という資格ができました。(ここは管理人の主観ですが。)
医療経営士が必要となった背景
以前は「医療は生命を扱う尊いものであり、人命のために全力を尽くすべきであるから、経営(=お金)のことを持ち出すのはナンセンス!」という流れがありました。
また、医療機関を管理するのは医師・歯科医師が中心であり、医療の専門家ゆえに経営について明るいとはいえない人も少なくありません。
医師・歯科医師は医療についての知識を習得するだけでも大変です。
そのため経営面まで学ぶ余裕はないのも頷けますし、医学部や歯学部では経営面を学ぶことも十分ではありません。
それでも多子低年齢社会で高度経済成長にあった時代は医療費問題も明るみに出ることがなかったこともあり、医療機関は一生懸命に医療を提供していれば経営面での問題はあまり生じなかったのです。
一方で医療費抑制は病院利益減少にもつながるの。
現在日本は少子高齢化が進んでいます。
そして経済成長も高度経済成長期と比較すると、もちろん停滞していますね。
国民から得られる社会保障費を増えすことは簡単ではないため、増加していく医療費をどうするかは国全体の問題となりました。
特に増加する高齢者は医療費がかかる上に、その費用を支える若者が少なく医療費の捻出が厳しくなってきたのです。
国は医療費をなんとかするために診療報酬改定などの対策を打ち出します。
診療報酬を引き下げることなどで医療費が抑制できないか検討されるのですね。
診療報酬とは簡単にいうと病院の稼ぎですから、診療報酬が引き下げられると病院の利益が減ることになります。
その結果、医療機関にとっては減収が進み経営は厳しくなっていきます。
さらに昨今の情報社会の中で患者も医療機関を選択するようになり、放っておいても勝手に患者が来院してくれるという状況でもなくなっています。
こういった種々のことから、経営面に打撃を受け最悪は閉院せざるをえない機関も出てきました。
医療機関は本来は利潤を求める機関ではないので、いかに稼ぐかが第一使命ではありません。
しかし、雇用している労働者を養わなくてはいけませんし、医療機関を必要とする患者のためにも簡単に潰れるわけにはいきません。
そのために、「全うに医療を提供しながら潰れずに、むしろ患者や地域のために発展できるように利益を出す」必要があるのです。
昨今は、この簡単とはいえない課題に対して真剣に考える必要があります。
一方で医療機関はその経営に高い特殊性があります。
そのため、一般的な経営とは別に「医療経営」という言葉が生まれたのでした。
そして、その医療経営を担う専門家として「医療経営士」が誕生したわけです。
目指せ、医療経営士!
医療経営士になるとどうなる?
医療経営士の資格を取ったからといって、すぐに目に見えて何かが変わることはないかもしれませんが、やはりメリットはあります。
メリット
資格の恩恵を受けるのは本業が何かで変わってきますが、ざっくりとメリットを列挙してみます。
メリット
- 医療における金銭の流れが把握できるようになる!
- 医師との話題が豊富になる!
- 経営者(院長など)から頼りにされるようになる!
- 社内でのアピールになる!
- 医療経営情報のアップデートがしやすい!
- 医療経営士同士で切磋琢磨できる!
ざっくりとこんな感じでしょうか。
特に最近は医療経営士が増えてきたこともあり、各地で医療経営士同士の勉強会やセミナーが開催されています。
他院の医療経営士や他職種の医療経営士との交流は貴重な経験ですし自分を磨くことにもつながりますね。
さて一方で医療経営士のメリットは本業が何かによって変わってくるかと思います。
医療経営士資格を目指すことを考える人は、医療機関で勤務している事務関連の方や、製薬会社MRや医薬品卸MS、医療機器メーカーや医療機関と取引のある金融機関などに勤めている方かと推測します。
そこで、医療経営士のメリットをそれぞれの本業に分けて考えてみます。
医療機関勤務
医療機関で勤めている方にとっては、医療における金銭の流れはすでに知っていることが多いかもしれません。
そして、医療機関内では医療経営士資格を持っていたからといって昇給や昇格などのアピールにつながることも期待は薄いかと思います。
医療経営士の勉強をすることにより、現在のみならず今後の医療制度や政策を知り、理解することができるようになるということは実際の現場で役立つでしょう。
変わりゆく医療制度や政策について知識や能力があれば院内でも「あいつは経営のことは良く知っている」となります。
院長や経営者の耳に入れば頼りにされるはずです。
さらに医師とのコミュニケーションも円滑になることが予想されます。
医師は経営面、とりわけ診療報酬に興味はあれども細かく勉強する時間がないため、自身の医療に直結する診療報酬や、その改定などの話題には食いつきます。
医師の苦手な経営面のことをよく知っているとなれば、医師が自分の意見を聞いてくれやすくなることも期待できますね。
医療機関外勤務
医療機関外勤務で医療経営士資格を持とうとする方は、製薬会社MRや医薬品卸MS、医療機器メーカー、医療機関と取引する金融関連会社勤務の方と考えます。
医療関連業界で仕事をする上で民間会社経営と異なる医療経営、つまりは医療の金銭の流れや医療制度を知ることは常識として必要になってくるでしょう。
実際、武田薬品やノバルティス、第一三共などの製薬会社やアルフレッサHDなどの医薬品卸会社は医療経営士資格取得を推奨していますし、各種銀行も自行に医療経営士がいますというアピールをしています。
そしてなにより、診療報酬関連の話題に食いつく医師との話題が広がり関係性が深まるでしょうし、院長などとの距離も縮まることでしょう。
MRやMSについていえば、昨今はインターネットの普及で医師もMRやMSと直接面談をしなくても薬剤情報を入手できるようになっています。
そのため、医薬品情報だけであれば直接会わなくてもよいという医師もいるでしょう。
そこで、医薬品情報の他にも診療報酬や医療政策などについて豊富な話題があるMR・MSであれば、医師に会う価値があると差別化されることになります。
営業担当として自社製品・サービスのことだけでなく、「相手側(医療機関)の懐に一歩踏み込み、現在だけでなく未来のことも見据えた医療経営の視点からの情報提供が可能なスタッフの差別化」は医療機器メーカーや金融機関の営業担当の方にも当てはまるといえます。
また、資格を持ったから昇格、昇給はないと思いますが、持ってない人に比べるとアピールにはなるでしょう。
さらに医療機関との関係性が良好になれば、そこから成績アップし昇格、昇給に繋がるといったことは期待できるはずです。
そして、本業が何であっても医療経営士になると日本医療経営実践協会から定期的に情報誌やニュースが送られてくるため、それに目を通すことで医療経営に関する最新の情報を得ることができるものメリットといえます。
MRさんについてはこちらの記事も参考にしてみてください。
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もしMRが医療経営士資格を持っていたら
みなさん、こんにちは。 管理人のらいおんです。 管理人は医師ということもあり、MR(medical representative)さんにお会いすることが多々あります。 一方で「医療経営士」を名乗るMR ...
デメリット
民間資格ではあるものの、資格は資格なので持ってて損ということはないのですが管理人が考えるデメリットを挙げてみます。
デメリット
- 資格を取っただけでは何も変化が起きない
- 何かと費用がかかる
取得しただけでは変わらない!
メリットは前述の通りですが、医療経営士資格も取っただけで終わっては何も変わりません。
医療経営士資格を活かすためには資格取得後に、培った知識を使ってどう行動するかが大切です。
つまり、「医療経営士」であることを名刺にも入れてアピールしつつ、その実力を医師などを相手に発揮してこそ医療経営士資格が役立ちます。
宝の持ち腐れにならないように、資格取得後も日々情報のインプットとアウトプットを行う心掛けが必要になります。
費用はそれなりにかかる
医療経営士資格の取得にかかる費用をみてみます。
医療経営士は「試験を受ける準備の時」、「いざ受験をする時」、「合格後に協会に入会する時」、「資格・入会を維持する時」と各段階で費用がかかります。
- 準備料
- 受験料
- 登録料、年会費
このうち準備については人それぞれであるため、まずは必ずかかる費用として受験料、登録料・年会費についてみてみます。
受験料
まずは受験料です。
受験級 | 受験料 |
3級 | 9,100円 |
2級 第1・2分野同時 | 16,000円 |
2級 第1・2分野個別 | 14,000円 |
1級 | 50,000円 |
3級試験は2019年は8,640円でしたが9,100円に増額されていました。
2級試験は第1・2分野同時受験が15,400円から16,000円に、片分野受験が13,400円から14,000円に増額されていました。
2級試験を受ける初回は当然1・2分野の両方を受けるので16,000円の支払いが必要です。
問題となるのはどちらか一方が不合格で、不合格分野を個別に再受験しなければならないときです。
その個別の受験料は14,000円!!
両分野受験と比べて2,000円しか安くありません…。
2級試験は気合いで一発合格しないと、受験料だけでも馬鹿になりませんね。
そして1級は破格の50,000円です。
おいそれと受験する受験料ではありませんね。
果たして受験料分を1級取得後に回収できるのでしょうか。
1級取得者の声が聞きたいですね。
登録料・年会費
医療経営士資格を取得するためには受験に晴れて合格した後に日本医療経営実践協会に医療経営士としての登録をお願いし、認めてもらわなければなりません。
そのために登録料として10,000円、年会費10,000円の合計20,000円が必要です。
そして年会費はもちろん毎年かかりますので資格維持のためにランニングコストもかかります。
ランニングコストでいえば、医療経営士資格は3年毎に更新が必要となっており、更新時に10,300円かかります。
ここまでで、まず1年間3級の医療経営士を名乗るために最低限必要な費用は受験料9,100年+登録料10,000円+年会費10,000円=29,100円となります。
準備料
さて、最低限の費用がわかったところで、最後に準備料について考えてみます。
準備料とは受験の勉強にかける費用ですね。
ここにいくらかけるかは人それぞれなのですが、ここを0円でいける強者はなかなかいないのではないでしょうか。
受験のためのテキストなどは色々ありますが、標準的と考えられるものを挙げてみます。
医療経営士初級テキスト(3級用)全8巻 | 22,000円 |
医療経営士中級テキスト(2級用)全19巻 | 52,390円 |
医療経営士上級テキスト(1級)全13巻 | 42,900円 |
なるほどなっとく 医療経営Q&A50 初級【5訂版】 | 3,300円 |
なるほどなっとく 医療経営Q&A60 中級 | 4,180円 |
医療経営士予想問題集 3・2・1級 | 各2,000円 |
スマホでできる3級試験問題集 | 2,980円 |
テキストの費用が目を見張るのでついつい2級と1級のテキスト費用も載せてしまいました。
3級試験の勉強のために「テキスト」と「なるほど、なっとく医療経営Q&A50」と「予想問題集」を全部揃えると27,300円です…。
最低限かかる費用である29,100円を合わせると56,400円になりますね。
さすがに高い…。
ということで削れそうな準備料を検討すると、準備料のほとんどはテキスト代ですね。
テキストはヤフオクであったりメルカリで中古がちょくちょく販売されていて15,000円前後の印象です。
またAmazonや楽天でも販売されていて、ポイントを使用できる方などはそちらで購入することもありでしょう。
ちなみにAmazonや楽天の場合はセットではなく各巻での購入になります。
テキストを購入する際は最新版なのかをしっかりチェックしてください。
初級テキストの最新版は以下の通りです。(2023年1月時点)
(1)医療経営史【第3版】
(2)日本の医療政策と地域医療システム【第4版】
(3)日本の医療関連法規【第4版】
(4)病院の仕組みと各種団体、学会の成り立ち【第3版】
(5)診療科目の歴史と医療技術の進歩 【第3版】
(6)日本の医療関連サービス【第3版】
(7)患者と医療サービス【第3版】
(8)医療倫理/臨床倫理
日本の医療関連法規第4版 その歴史と基礎知識 (医療経営士テキスト初級) [ 平井謙二 ]
一方で、思い切ってテキストを使用しないというのもありでしょう。
管理人はテキストを買わずに、Q&A50と予想問題集だけで合格できました。
というか、その当時はテキスト以外には勉強資料がQ&A50と予想問題集くらいしかなかったのです…
管理人がQ&Aを購入したときは2訂版だったのですが、現在は5訂版が発売されています。
5訂版は2023年1月現在はkindle未対応です。
4訂版であればKindle unlimitedを利用すると無料で読むことが可能となるので、まずは4訂版を読んでみてもいいかもしれません。
こちらの記事で無料で読む方法を解説しています↓
問題集はやった方がいいです。
テキストなどでは情報をインプットできても、それを試す場がありません。
問題集を解くことで知識を深め、試験の感覚をつかむとよいと考えます。
問題集には大きく分けて「予想問題集」と「スマホでできる問題集」の2つがあります。
予想問題集は電子書籍で300ページ以上のボリュームがあります。
基本的には1問提示につき1ページ、解説も1問につき1ページあり、全160問なのでやむを得ないです。
予想問題集は電子書籍として読む以外にもPDFとして読むこともできます、
管理人は最初はPCとスマホで電子書籍やPDFにして問題に取り組んだのですが、個人的には若干使用しにくかったため、印刷してテキストのようにして使用していました。
若干の扱いにくさを感じたのは管理人だけかもしれませんが、おすすめです。
今まで医療経営士3級試験の問題集は上述の予想問題集が唯一無二の存在でした。
管理人自身も使用したのですが、個人的にはスマホでさくさくと取り組みたいと感じました。
ということで「スマホでできる問題集」を作成しています。
スマホでできる問題集は医療経営士初級テキストなどを参考にした予想問題240問に追加問題100問程度を用意してあります。
最近は「当サイト記事と当サイト問題集のみで合格できた」という方のご連絡をいただくこともあり嬉しい限りです。
合格の保証をすることはできませんが、ご利用をご検討ください。
さて、まとめると、あくまで個人的主観ですが3級試験の一般的な対策としては「Q&A」と「予想問題集」or「当サイト問題集」の約5,000円でもいける人はいけると思います。(責任は持てませんが)
問題集は今までは「予想問題集」の一択でしたが、ブラウザ上で動作しスマホで簡単に取り組めるタイプ「スマホでできる問題集」もありますから、ご利用者の好みによってどちらかに取り組むとよいと考えます。
と言いながらも、当サイトの「スマホでできる問題集」からは試験に同じような問題が出たという話は耳にしますので、是非ご利用をご検討ください。
管理人が考えるおススめテキストについてはこちらの記事も参考にしてください↓
-
【おすすめ5選!】医療経営士試験の問題集&テキスト
目次1 医療経営士試験の問題集&テキスト5選!2 おすすめテキスト3選!2.1 なるほど、なっとく医療経営士試験 Q&A502.2 医療経営士3級試験のお勉強|メディマネ ...
また、勉強法についてはこの記事の下に出てくる【2024年版】医療経営士試験の難易度、合格率と勉強法の記事も参考にしてみてください。
ここまで記載したところで、試験対策として協会主催の直前ポイント講座なるものがあることを思い出しました。
管理人は受けたことがないので具体的な内容まではわかりませんが、予想される試験のポイントを勉強するようです。
私が知りうる範囲では直前ポイント講座の講師はその地域の医療経営士が担当しているため、どんな方が講師になるかで講座内容が異なることになります。
その直前講座の受講料をみてみます。
3級試験の直前講座は受講料15,000円となっています。
2級は両分野で25,000円、個別でそれぞれ15,000円とのこと。
そして講座を受けるためにはテキストを用意しておく必要があるということでテキスト代が強制的にかかります。
つまりは3級試験の直前講座は受講+テキストで30,000円はかかりますね。
2級となると受講料 25,000円+テキスト 51,430円で76,430円…
さすがにちょっと…という額ですね。
3級試験の直前ポイント講座はオンラインによるオンデマンド方式となりました。
「初級テキストを事前に読んで参加してください」とのことですが、強制的に購入させられることはなさそうです。
しかも参加者には特別予想問題70問がプレゼントされるそうです。
以前に比べると、テキストを強制的に買わなくてもよいことや遠方でも参加できることなどから素晴らしい対応だと思います。
一方で、協会公式の3級試験実施概要ページに大きくバナー広告として掲載されている点に個人的にはいやらしさを感じます。
まぁ試験対策を外部組織に取られてしまうのであれば、自前で試験ビジネスをしてしまおうというのはよくわかります。
最初に言った通り、準備にかける費用は人ぞれぞれなので自分が満足できればいいわけですが、テキストがもう少し安くなってほしいと切に願います。
まとめ
医療経営士はこれからの日本の医療の未来の一端を担う存在になる可能性を持っていますね!
資格をどう活かすかは個々の行動にかかっていますが、それでも試験のために勉強したことは役立ちます!
出費はありますが、医療経営士資格試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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【2024年版】医療経営士試験の難易度、合格率と勉強法
目次1 医療経営士試験の勉強法、難易度、合格率を考える2 医療経営士試験について3 医療経営士3級試験の難易度・合格率3.1 3級試験の難易度3.2 医療経営士3級試験の合格率と勉強法4 医療経営士2 ...