みなさんこんにちは。
2018年3月末に行われた介護報酬改定で新たな介護施設が誕生したのでしたね。
その名も
介護医療院!
介護医療院とはいったい何でしょうか?
その特徴は??
ここでは産声を上げたばかりの介護医療院について徹底解剖していきます。
ところで介護医療院って医療経営士試験に出るの?
ここで整理しておきましょう。
※介護報酬の細かな単位数などは常に正確とはいえません。医療経営士試験で問われることはないと考えますので概要をイメージしていただけたらと思います。
目次
なぜ介護医療院はできた?
介護医療院は介護保険の施設サービスの一つなわけですが、介護保険の施設サービスといえば2018年3月末までは「介護老人福祉施設」、「介護老人保健施設」、「介護療養型医療施設」の3施設となっていました。
新たに介護医療院ができ、介護療養型医療施設がなくなったわけですが、それはどうしてでしょうか?
でも、全くもって違います。
介護医療院がなぜできたのか?
介護療養型医療施設がなぜなくなったのか?
まずはその歴史をみてみましょう。
その前に、介護保険制度・施設サービスについて簡単におさらいしたい方は次の記事をどうぞ。
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【医療経営士3級試験対策】介護保険制度を簡単にまとめてみた。
医療経営士試験の勉強は順調ですか? 今回は… 医療経営士3級対策 介護保険法関連 についてまとめていきます。 「医療経営士3級試験を受験予定!」 「介護保険について何も勉強していない!」 ...
介護医療院ができた経緯
介護医療院は高齢者医療・介護のあり方に効率的に対応するものの一つとして創設されました。
ということは、それまでの体制では非効率な面があったということになります。
そこでまずは介護医療院ができるまでの簡単な経緯をみていきましょう。
療養型病床群の創設
まず初めに療養型病床群についてです。
そもそも病床は医療を提供するものですから医療型病床という言葉はありません。
病床が多種に区分された結果、一般的な医療を提供する病床は「一般病床」と呼ばれています。
療養型病床群を説明する前に、まずは医療と療養という言葉のイメージを押さえておきましょう。
簡単なイメージとしては、医療とは患者の状態を悪くしている疾患を治療するために様々な検査・処置などの医療行為が行われることです。
一方の療養とは状態の安定した患者の介護や機能訓練などが行われることです。
さて上述のように医療の根本は疾患の治療となりますが、疾患・状態によっては入院治療となります。
その後、治療が終了して状態が回復すると退院というのが一般的な医療の流れです。
この場合の入院は医療だけで完結しているため一般病床だけで問題ありません。
しかし問題なのは、治療後に全員がすぐに退院できるわけではないということです。
例えば、脳梗塞や重症の骨折後などは医療的治療が終了してもリハビリテーションが必要になったりします。
また、病態によっては残念ながら意思疎通がとれなくなって寝たきりになってしまうなども起こります。
つまり、当初は医療による治療のために入院となった患者が、治療終了後も退院できず長期療養が必要となる場合があるのです。
これは火災が発生したときの対応を考えるとイメージしやすいかもしれません。
火災が発生した場合(=疾患が発症)、まずは消火活動(=医療)が必要になります。
そして鎮火した後(=疾患改善・医療終了)、被害が小さければすぐに元の生活に戻れますが、被害が大きければ復興作業(=療養)が必要になりますね。
人間の身体・生活にとっても長期療養と治療では必要なことが異なってきます。
そのため、長期療養を必要とする患者には、それに適した病床が必要となりました。
そうしたことから、1993年の第二次医療法改正により療養型病床群が創設されたのです。
療養型病床群
長期療養を要する患者の入院に対応できる療養環境がある病床のこと
介護療養型医療施設の創設
その後、2000年に介護保険制度がスタートすると介護療養型医療施設が創設されました。
介護療養型医療施設とは、「医療を必要とする要介護者が長期的に療養できる施設」です。
高齢化が進むにつれて持病のある人が増えてきたことで、介護だけでなく医療も必要な患者も増えました。
例えば、糖尿病でインスリン注射が必要とか、胃に直接栄養を入れる「胃ろう」の管理などですね。
そのような医療処置が必要になった場合には一般的な介護者だけでは対応が難しいため、要介護者が医学的管理と介護を受けられる施設が必要になりました。
それが介護療養型医療施設というわけです。
療養病床の創設
介護療養型医療施設が創設された翌2001年には医療機関にも変化が起きました。
それは療養病床の創設です。
1993年の第二次医療法改定の際に療養病床群が創設されたのは前述の通りですが、実はそれ以前の1983年に特例許可老人病院が制度化されていました。
特例許可老人病院を極簡単に説明すると、長期入院を必要とする高齢者が多くいる病院です。
特例許可老人病院を届け出ると一般病院よりも医師や看護師の数が少なくても運営できるようになるのですが、その分診療報酬が少なくなる仕組みとなっていました。
その場合は届け出た時よりも診療報酬が少なくなる仕組みだったのです。
療養病床に話を戻します。
病床については第四次医療法改正で細分化されました。
細分化と同時に療養型病床群と特例許可老人病院が再編され「療養病床」に一本化されたのです。
改正前 | 改正後 |
精神病床 | 精神病床 |
感染症病床 | 感染症病床 |
結核病床 | 結核病床 |
その他病床 | 一般病床 |
療養病床 |
この改正により、その他の病床を持つ医療機関は「一般病床」か「療養病床」かを選ばなくてはいけなくなりました。
そして療養病床は、医療保険を適用する「医療療養病床」と介護保険を適用する「介護療養病床」の二つに分類されました。
医療行為>介護=医療療養病床。
介護>医療行為=介護療養病床。
介護療養型老人保健施設の創設
療養病床は医療の必要性によって医療療養病床と介護療養病床が分類されました。
しかしながら、その後の調査では両病床間で「入院患者の状況に大きな差がない(医療の必要性の高い患者と低い患者が同程度混在)」ことがわかりました。
医療療養病床と介護療養病床は適用する保険が異なるにも関わらず、やってる内容がほぼ一緒では病床を区別する意味がありません。
そのため、医療と介護の役割分担を「医療は医療機関」、「介護は介護施設」と明確にしていく方針になりました。
そして、介護療養型老人保健施設を創設し介護療養病床の役割を介護施設に転換していくこととなったのです。
出典:厚生労働省 [PDF]介護療養病床の経緯についての一部を編集
国としては介護療養病床から介護療養型老人保健施設への転換を勧めていましたが、実際はあまり進みませんでした。
転換する利点が労力に見合わないと考える医療機関も多かったのですね。
そのため、介護療養病床は2012年度末で廃止予定となっていたのですが、6年間延長となり2018年度末までとなったのでした。
こういった経緯により、2018年度末以降の介護療養病床の新たな転換先として創設されたのが「介護医療院」なわけです。
介護医療院の特徴
それでは介護医療院の施設としての特徴をみていきましょう。
まずは介護医療院は施設であるということを押さえておきましょう。
一方の介護療養病床は病院です。
そのため、介護療養病床から介護医療院への転換は病院から施設への転換となるのです。
介護医療院Ⅰ型とⅡ型
次に介護医療院の具体的な内容をみていきます。
介護医療院は介護医療院Ⅰ型・Ⅱ型の2つの形態があります。
Ⅰ型は介護療養病床に相当し、Ⅱ型は老人保健施設に相当します。
よって、Ⅰ型の方がⅡ型に比べて重い疾患をもっている患者が利用することが想定されています。
Ⅰ型とⅡ型について、さらに詳細にみていきましょう。
まずは下図をみてください。
出典:厚生労働省 [PDF]介護医療院の概要を一部編集
介護医療院の基本的性格としては要介護者の「長期療養・生活施設」となっています。
介護療養型病床は病院であるため生活施設ではないですし、老健は基本的には短期間の入居施設です。
介護医療院は介護療養病床や老健の施設基準を持ちながら「長期療養・生活が可能な施設」ということが、既存施設と異なるところです。
介護医療院の方が医療対応の幅が広いです。
介護医療院の設置根拠は介護保険法で、医療は提供するものの生活施設としての機能重視が明確化されています。
上の図では主な利用者像ではI型の欄に「療養機能強化型A・B相当」となっていますね。
療養機能強化型とは療養病床のうち、医療やリハビリ、看取りへのケア(ターミナルケア)などを行っている患者が一定の割合を満たした病床をさしています。
療養機能強化型の要件などは医療経営士試験では覚える必要はないと思いますが、一応記載します。
療養機能強化型の要件
- 入院患者のうち、重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者が一定割合以上であること
- 入院患者のうち、一定の医療処置を受けている人数が一定割合以上であること
- 入院患者のうち、ターミナルケアを受けている患者が一定割合以上であること
- 生活機能を維持改善するリハビリテーションを実施していること
- 地域に貢献する活動を実施していること
そして療養機能強化型の具体的な基準はこちらです。
強化型A | 強化型B | |
重症度割合 | 50%超 | 50%超 |
医療処置 | 50%超 | 30%超 |
ターミナルケア | 10%超 | 5%超 |
リハビリ | 要件あり | 要件あり |
地域貢献活動 | 要件あり | 要件あり |
療養機能強化型A・Bには重症度が高めで医療処置やターミナルケアを必要とする患者がいることがわかります。
介護医療院Ⅰ型はこれらの患者に長期的に対応できる必要があります。
一方で介護医療院Ⅱ型は老人保健施設の施設基準で、対象患者もⅠ型より安定した患者さんとなっています。
人員基準
介護医療院Ⅰ型とⅡ型では対応する患者像が異なります。
そのため人員基準も違いがあります。
Ⅰ型はⅡ型よりも医療や介護を必要とする患者が多いと想定されるため、Ⅰ型の方が人員基準が手厚くなっています。
介護医療院 | ||
Ⅰ型 | Ⅱ型 | |
医師 | 48:1 (施設で3以上) |
100:1 (施設で1以上) |
薬剤師 | 150:1 | 300:1 |
看護職員 | 6:1 | 6:1 |
介護職員 | 5:1 | 6:1 |
栄養士 | 定員100以上で1以上 | |
介護支援専門員 | 100:1 (1以上) |
医師数で行くとⅠ型では患者48人に対して医師1人以上が必要です。
一方でⅡ型であれば医師数は患者100人に対して1人以上いればよいとされていますね。
看護職員は共に患者6人に対して1人以上ですが、介護職員はI型で患者5人に1人、Ⅱ型で患者6人に1人と違いがあることは覚えておきましょう。
介護職員数に関しては、その人数で介護報酬が異なってくるので上述する基準さえ満たせばよいというわけでもありません。
これについては後述します。
また医師の宿直についても違いがあり、I型は宿直が必要ですがⅡ型は必要ありません。
施設基準
さて、続いては介護医療院の施設基準をみてみましょう。
まずは下図をみてください。
出典:厚生労働省 [PDF]介護医療院の概要を一部編集
施設基準についてはⅠ型とⅡ型で違いはありません。
病室・療養室
施設基準でのポイントの一つに病室・療養室の床面積があげられます。
基本は8.0m2以上ですが、転換の場合は6.4m2以上でよいことになっています。
介護療養病床の基準が6.4m2以上であるため、介護療養病床から介護医療院に転換した場合は、移行措置としてしばらくはそのままでいいですよということですね。
しかし、大規模改修までと注意書きがありますし、この移行措置もいつなくなるかはわからないことには注意が必要です。
また、構造設備として廊下幅は1.8m(転換の場合は1.2m)、中廊下は2.7m(転換の場合は1.6m)も余裕があれば覚えておきましょう。
医療設備
医療設備については、処置室、臨床検査施設、エックス線装置、調剤所が必要になっていますが、病院や診療所との併設であれば共用が認められています。
つまり介護医療院に設備がなくてもよいことになります。
介護医療院のメリット
さて、介護医療院のイメージはついたでしょうか。
ここからは介護医療院のメリットをみていきましょう。
介護医療院は介護療養病床からの転換先として新設されたわけですが、転換を検討する対象は介護療養病床以外にもあります。
例えば、介護療養病床から転換した介護療養型老人保健施設などですね。
ここでは、介護医療院に転換する前の立場である介護療養病床と介護療養型老人保健施設に分けて、転換後のメリットをみていきましょう。
介護療養病床からみたメリット
介護療養病床から介護医療院への転換は収益がアップすることが期待できます。
介護医療院の介護報酬は「Ⅰ型かⅡ型か」、「介護職員の割合はいくらか」、「要介護度はいくらか」で変わってきます。
介護療養病床から転換する場合は介護医療院Ⅰ型を目指すことになりますから、まずはⅠ型の介護報酬をみてみましょう。
介護報酬は、一定の医療を提供する患者の割合や介護職員数など、サービスの手厚さによってサービス費Ⅰ~Ⅲに分けられています。
サービスの手厚さはⅠ>Ⅱ>Ⅲです。
サービス費Ⅰ
療養機能強化型A相当 介護4:1 |
サービス費Ⅱ
療養機能強化型B相当 介護4:1 |
サービス費Ⅲ
療養機能強化型B相当 介護5:1 |
|
要介護1 | 825 | 791 | 779 |
要介護2 | 934 | 898 | 875 |
要介護3 | 1,171 | 1,127 | 1,082 |
要介護4 | 1,271 | 1,224 | 1,170 |
要介護5 | 1,362 | 1,312 | 1,249 |
患者に提供する「もの・こと」のレベルが高い方が介護報酬単位も高いのは当たり前のことではありますね。
では続いて療養機能強化型の介護療養病床から介護医療院に転換した際の変化をみてみましょう。
収益差は1床1日当りの単位数です。
収益差 | |
療養機能強化型A ⇒介護医療院(I) | +25~26単位 |
療養機能強化型B ⇒介護医療院(Ⅱ) | +5単位 |
療養機能強化型B ⇒介護医療院(Ⅲ) | +9単位 |
どのパターンをみても介護報酬がプラスとなっていますね。
+9単位でも100床の場合は3,285,000円のプラスです。
元々、療養機能強化型である場合は報酬上のメリットはありそうですね。
介護療養型老人保健施設からみたメリット
介護療養型老人保健施設(介護療養型老健)はもともとは介護療養病床だったのでしたね。
そのため介護療養型老健も介護医療院への転換が認められています。
介護療養型老健の基本報酬としては「療養強化型」と「療養型」の2つがあったのですが、点数の高い療養強化型が廃止となってしまいました。
そのため「療養強化型」であった介護療養型老健はそのままであれば減収必至です。
また後述しますが、もともと「療養型」であっても要介護度によっては介護医療院の方が点数が高くなります。
つまり介護医療院の転換で増収につながるメリットがでてくるのですね。
介護療養型老健からは介護医療院Ⅱ型を目指すことになるので、Ⅱ型の基本報酬をみてみましょう。
サービス費I
介護4:1 |
サービス費Ⅱ
介護5:1 |
サービス費Ⅲ
介護6:1 |
|
要介護1 | 758 | 742 | 731 |
要介護2 | 852 | 836 | 825 |
要介護3 | 1,056 | 1,040 | 1,029 |
要介護4 | 1,143 | 1,127 | 1,116 |
要介護5 | 1,221 | 1,205 | 1,294 |
介護療養型老健から介護医療院Ⅱ型への転換の報酬は要介護度などで変わってきます。
介護療養型老健から介護医療院Ⅱ型のサービス費Ⅰ~Ⅲへの転換収支差をそれぞれみてみましょう。
収益差 (単位/日) |
年間収支差 (100床) |
|
要介護1 | -42 | -15,330,000円 |
要介護2 | -30 | -10,950,000円 |
要介護3 | 60 | +21,900,000円 |
要介護4 | 72 | +26,280,000円 |
要介護5 | 76 | +27,740,000円 |
収益差 (単位/日) |
年間収支差 (100床) |
|
要介護1 | -58 | -21,170,000円 |
要介護2 | -46 | -16,790,000円 |
要介護3 | 44 | +16,060,000円 |
要介護4 | 56 | +20,440,000円 |
要介護5 | 60 | +21,900,000円 |
収益差 (単位/日) |
年間収支差 (100床) |
|
要介護1 | -69 | -25,185,000円 |
要介護2 | -57 | -20,805,000円 |
要介護3 | 33 | +12,045,000円 |
要介護4 | 45 | +16,425,000円 |
要介護5 | 49 | +17,885,000円 |
介護療養型老健の入所者は大部分が要介護3以上と考えられるため、介護医療院に転換するメリットはありますね。
要介護3以上であればプラスと表現しましたが、これは改定となった介護療養型老健の基本報酬がもとになっています。
今まで療養強化型を届け出ていた介護療養型老健は介護医療院Ⅱ型(Ⅰ)への転換でも要介護4以上じゃないとプラスになりません。
しかし、介護療養型老健の療養型に移行するよりは介護医療院に転換した方が点数が高くメリットがあります。
介護医療院のデメリットは?
現時点でのデメリットをあえて挙げるとすると、介護医療院は「施設」なので「病院」である介護療養病床から介護医療院に転換後は「病院」に戻れないということがあるかもしれません。
職場が「病院」ではなく「施設」になることに抵抗をもつ医師などもいるかもしれませんね。
また、今回の介護報酬改定では介護医療院の点数が高くつきましたが、次回の介護報酬ではどうなるかわからないことや、施設基準の経過措置がいつなくなるかなども不安材料にはなるでしょうか。
新施設のためノウハウなどの既存情報がないというのが最大のデメリットかもしれません。
まとめ
介護医療院について何となくでもイメージできたでしょうか。
とにもかくにも新施設ですので今後どうなっていくか経過が重要になってきますね。
医療経営士試験でも出題されてくるでしょうから介護医療院の基本的事項はおさえておきましょう。
それではここまで読んでいただきありがとうございました!
次の記事でお会いしましょう!