みなさん、こんちには。
医療経営士3級試験対策サイトのメディマネです。
さて今回は
医療経営士試験対策!
オンライン診療
についてまとめていきます。
オンライン診療は保険診療の現場では盛り上がっているとはいえない状態ですがなぜでしょうか。
オンライン診療について学びつつ、試験対策として必要なところをみていきましょう。
目次
オンライン診療の仕組み
オンライン診療については、厚生労働省が2018年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、ガイドライン)をまとめており、その中でオンライン診療について定義しています。
オンライン診療
遠隔診療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。
まずは、オンライン診療は遠隔診療の一部であるということを押さえておきましょう。
それでは遠隔診療の定義は何でしょうか。
これも同指針のなかで述べられています。
遠隔診療
情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為
情報通信機器とは、いわゆるスマホやタブレット、そしてパソコンなどのことですね。
それらを使った健康増進、医療に関する行為を遠隔診療と定義しています。
遠隔診療の定義を見直すと「健康増進、医療に関する行為」となっていますね。
言い換えると、医療に関せず、健康増進に関する範囲の行為も遠隔診療に当てはまります。
実は遠隔診療にはオンライン診療、オンライン受診勧奨、遠隔健康医療相談という3つの形態があります。
そして情報通信機器の利用者によってもスタイルが分けられます。
医師-医師間(D to D) | 情報通信機器を使って専門医師が他医師を支援する |
医師-患者間(D to P) | 医師が情報通信機器を使って遠隔地の患者の診療を行う |
遠隔診療の形態と利用者によるスタイルについてまとめると、次の図になります。
オンライン診療とオンライン受診勧奨の医師-患者間について太字枠になっていますね。
ガイドラインでは、この太字枠内を対象としているということを示したものです。
そのため本ページでも、太字枠内である「オンライン診療とオンライン受診勧奨の医師-患者間について」を見ていきます。
オンライン診療 | ・高血圧患者の血圧コントロールの確認 ・離島の患者の骨折を診断し、処置の説明等を実施 |
オンライン受診勧奨 | ・医師が問診から医学的判断を行い、適切な診療科への受診を勧める(例:発疹を診察し、蕁麻疹と考え皮膚科受診を勧める) |
遠隔健康医療相談 | ・小児救急電話相談事業:応答マニュアルに沿って小児科医師・看護師等が電話により相談対応 ・医師の判断を伴わない、一般的な情報提供や受診勧奨(例:発疹があるならば皮膚科受診を勧める) ・教員が学校医に、複数生徒が嘔吐した場合の一般的対応方法を相談 |
オンライン診療の適切な実施に関する指針を一部変更
オンライン診療
では改めてオンライン診療についてみていきます。
定義は前述した通りです。
ここでは次の項目についてまとめていきます。
- 背景
- 活用分野
- 診療報酬
- 期待・関心
- 必要設備
オンライン診療の背景
まずは現在にいたるまでの、オンライン診療の背景を簡単にまとめていきます。
制度としての始まりは1997年の「情報機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」になります。
その中では、「直接対面を基本としながら、それに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には遠隔診療を行うことができる」とされていました。
しかしながら、遠隔診療の条件として「離島、へき地の患者」、「特定の慢性疾患の患者」、「原則初診対面」などが挙げられており、実際の現場では利用者はかなり限定的でした。
そのため遠隔治療は普及してきませんでした。
そのような背景から、2015年には厚生労働省医政局事務連絡において、上述の内容はあくまで例示であり、「対象患者や疾患は限定されない」と発表がなされました。
その後は安倍信三首相が、2016年に「ビッグデータや人工知能を最大限活用し、予防、健康管理や遠隔診療を進め質の高い医療を実現していきます」と述べ、続いて2017年には「対面診療とオンラインでの遠隔診療を組み合わせた新しい医療を次の診療報酬改定でしっかり評価する」と明言しました。
その結果、2018年3月には「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定されました。
様々な企業がオンライン診療システムをリリースし医療機関がオンライン診療に取り組みやすくなり、またビデオ通話などが世間に浸透してきたことなどから、オンライン診療が脚光を浴びることになってきたのです。
オンライン診療の活用分野
ではオンライン診療はどのような分野で活用されているのでしょうか。
オンライン診療の目的について、ガイドラインでは3つ挙げています。
オンライン診療の目的
- 患者の日常生活の情報も得ることにより、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと
- 医療を必要とする患者に対して、医療に対するアクセシビリティ(アクセスの容易性)を確保し、よりよい医療を得られる機会を増やすこと
- 患者が治療に能動的に参画することにより、治療の効果を最大化すること
簡単にまとめると、情報通信機器を利用することで患者の医療の質を高めようということになりますが、対面診療ではなくオンライン診療が力を発揮するのはどういった場面なのでしょうか。
例えば一つには自覚症状のない生活習慣病の定期的診察などがあります。
高血圧、脂質異常症、糖尿病などは自覚症状がなくても重篤な疾患予防のためにも定期的診察が欠かせませんが、自覚症状がない患者は、「仕事で忙しい」などの理由で通院を止めてしまう場合があります。
医療者側からすると「身体壊したら仕事どころじゃないでしょ」ということなのですが、実際に働いている立場からすると、「仕事に都合をつけて病院を受診する」ことはそう簡単ではありませんね。
実際に、通院を中断してしまう理由としては「通院の手間」というのが高い割合を占めています。
そのような、いわゆる「忙しい」患者たちに向けて、少しでも受診の手間を減らすということではオンライン診療の強みが発揮されると期待されます。
上記の他にも、在宅医療においてもオンライン診療への期待が高まっています。
オンライン診療が十分可能になれば、医師は患者宅に訪問せずとも患者の様子を把握することができますね。
家族や訪問看護師などから、電話で報告を受けるよりも画像として患者を診る方が情報量が多いことは事実です。
まとめると、「多忙」「面倒」などの要素や、「動くのが大変」「付き添いなしでは受診できない」「交通手段などの問題で受診困難」など、とにかく「来院すること自体のハードルが高い」場面において、オンライン診療の活用が期待できます。
診療報酬
オンライン診療は恩恵を受けることができる患者が多数いると予想されますが、実臨床の場で普及しているとはいえません。
それはなぜでしょうか。
様々な要因はありますが、まずは病院の収益につながる診療報酬について考えてみます。
2018年度診療報酬改定では、医師-患者間の遠隔診療として、オンライン診療料・オンライン医学管理料・オンライン在宅管理料・精神科オンライン在宅管理料が新設されました。
しかし、オンライン診療料は1か月につき70点と設定されており、一般的な再診料72点と比較しても高いとはいえません。
さらに、オンライン診療料を算定するには、それなりの要件を満たす必要があります。
オンライン診療料の要件
- オンライン診療料が算定可能な患者に対して、リアルタイムでのコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な情報通信機器を用いてオンラインによる診察を行った場合に算定。ただし、連続する3月は算定できない。
- 対象となる管理料等を初めて算定してから6月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っている場合に限り算定する。ただし当該管理料等を初めて算定した月から6月以上経過している場合は、直近12月以内に6回以上、同一医師と対面診療を行っていればよい。
- 患者の同意を得た上で、対面による診療(対面診療の間隔は3月以内)とオンラインによる診察を組み合わせた療養計画を作成し、当該計画に基づき診察を行う。
- オンライン診察は、当該保険医療機関内において行う。また、オンライン診察を行う際には、厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針に沿って診療を行う。
- オンライン診療料を算定した同一月に、第2章第1部の各区分に規定する医学管理等は算定できない。また、当該診察を行う際には、予約に基づく診察による特別の料金の徴収はできない。
要件について厳しいと感じる現場が多いのではないでしょうか。
原則について簡単にまとめると、6か月間は毎月同一医師が対面診療を行っていて、オンライン診療を開始後は3か月に1回は同一医師と対面診療が必要だということですね。
そして、さらに施設要件や患者要件もクリアする必要があります。
施設要件
- 厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針に沿って診療を行う体制を有すること。
- オンライン診療料の算定患者について、緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制を有していること。
- 一月あたりの再診料等(電話等による再診は除く)及びオンライン診療料の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が1割以下であること。
オンライン診療料が算定可能な患者
以下に掲げる管理料等を算定している初診以外の患者で、かつ当該管理料等を初めて算定した月から6月以上を経過した患者。
- 特定疾患療養管理料
- 小児科療養指導料
- てんかん指導料
- 難病外来指導管理料
- 糖尿病透析予防指導管理料
- 地域包括診療料
- 認知症地域包括診療料
- 生活習慣病管理料
- 在宅時医学総合管理料
- 精神科在宅患者支援管理料
オンライン診療料70点を加算するためにクリアすべき要件はこのように多岐にわたっています。
オンライン診療にはオンライン診療料70点とは別にオンライン医学管理料100点というものがあるのですが、それを合わせても医療機関としては患者1人につき1ヶ月170点(= 1700円)ですから、設備投資などを考えると決して収益につながるとはいえません。
※オンライン医学管理料を算定可能な患者は、オンライン診療料を算定できる患者要件のうち在宅時医学総合管理料、精神科在宅患者支援管理料を除くものとなっています。
そのため現時点ではオンライン診療の導入に二の足を踏む医療機関が多いのですね。
現時点でのオンライン診療に対する診療報酬は高いとはいえないため、オンライン診療から直接収益を上げるのは容易ではありません。
しかし、オンライン診療を行っているということで患者が増えることも期待できますし、オンライン診療によって待合室の混雑緩和や待ち時間解消になれば患者満足度が高まります。
そのため間接的な増収につながる可能性は考えられます。
さらに、オンライン診療はこれからより取り組みやすく診療報酬が改定されることが期待されます。
まだオンライン診療に取り組んでいない医療機関が多いうちに、先駆けてオンライン診療を始めてノウハウを培っておくことは今後の見据えてもよいことかもしれません。
オンライン診療への期待・関心は
さて医療機関側からすると、導入に頭を悩ませるオンライン診療ですが、実際患者側はどのように感じているのでしょうか。
特定非営利活動法人日本医療政策機構が行った「2016年医療ICTに関する世論調査」によると、全体の85%が何らかの形でオンライン診療を受けてみたいと回答しています。
その内容としては「健康に関する予防的な相談」が最も多いですが、有症状時の対応としても期待があることがわかります。
患者側のニーズがあるのであれば、今後成長していく分野として考えて間違いなさそうですね。
必要設備
さて、実際にオンライン診療を行うにはどのような設備が必要になるでしょうか。
まずなんといっても患者とリアルタイムでビデオ通信ができる機器が必要ですね。
そして、ガイドラインでは個人情報の取り扱い対してセキュリティを確保した通信手段を用いることを定めています。
また、受診のための予約システムや、オンライン決済・処方箋の発行などについてのシステムも必要になります。
主なオンライン診療システムには「CLINICS」、「ポケットドクター」、「CURON」、「YaDoc」などがありますね。
利用料は年間使用料が無料から数十万円というものまで様々なようです。
ガイドラインのポイント
さて最後にガイドラインの「指針の具体的適用」に記載されている「オンライン診療の提供に関する事項」の中からポイントをまとめておきます。
医師‐患者関係/患者合意
- 医師・患者間で合意があること。
- 医師は患者がオンライン診療を希望する旨を明示的に確認すること。
- オンライン診療を実施する都度、医師が実施の可否を判断しオンライン診療が不適切と判断した場合は対面診療につなげること。
- 医師は患者にオンライン診療は対面診療を組み合わせる必要があることを説明すること。
- オンライン診療を実施する都度、医師が実施の可否を判断することを説明すること。
適用対象
- 患者の状態に関する有用な情報をオンライン診により得ること。
- 初診は原則として対面による診療を行うこと。
- 急病急変患者については、原則として直接の対面による診療を行うこと。なお、急病急変患者であっても、直接の対面による診療を行った後、患者の容態が安定した段階に至った際は、オンライン診療の適用を検討してもよい。
- 例外として、患者がすぐに適切な医療を受けられない状況にある場合などにおいて、初診であってもオンライン診療を行うことは許容され得る。ただしオンライン診療の後に、原則、直接の対面診療を行うこと。
- 原則として、オンライン診療を行う全ての医師は、直接の対面診療を経た上でオンライン診療を行うこと。ただし、在宅診療など特定の複数医師が関与することについて診療計画で明示していて、いずれかの医師が対面診療を行っている場合は、全ての医師が対面診療をしていなくても交代でオンライン診療を行ってよい。
- 禁煙外来など定期的な健康診断等が行われる等により疾病を見落とすリスクが排除されている場合であって、治療によるリスクが極めて低いものに限っては、患者側の利益と不利益を十分に勘案した上で、直接の対面診療を組み合わせないオンライン診療を行うことが許容され得る。
ガイドラインには多項目にわたって詳細に記載がありますが、ポイントとして上記をあげました。
最低限としておさえておくとよいのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?
オンライン診療についてざっくりとまとめてみました。
しかし、医療経営士試験では「オンライン診療の適切な実施に関する指針」などから突っ込んだ問題も出題されそうな気もします。
ガイドラインは幅広く、本ページでは扱いきれなかった細かいところは、当サイト問題集でカバーしています。
ぜひ問題集にも取り組んでみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました!