こんにちは。
さて今回は第6次医療法改正について、若干踏み込んで解説していきます。
第6次医療法改正は医療経営士テキスト第3巻の解説でも行数が多い方です。
とはいえ第7次、第8次の方が問題になりやすいようなという気はしますが。
それでは早速、始めていきましょう。
※記事中の資料の文字はスマホでは小さくて見にくいかと思います。お手数ですが、各自で拡大していただくか、自動回転オンでの横向き閲覧などの対処をお願いいたします。
目次
第6次医療法改正
まずは医療経営医テキストに記載の第6次医療法改正のポイントを押さえます。
ポイント
- 病床機能報告制度の創設
- 地域医療構想の策定
- 居宅等における医療の充実、医療・介護の連携の推進のための医療計画の見直し
- 地域医療支援センターの機能を医療法に位置付け
- 医療事故に係る調査の義務化、医療事故調査・支援センターの創設
日本は超高齢社会に突入していくのは医療法関連で学びました。
超高齢社会を考えても、医療と介護の連携・一体化がとても重要な課題です。
そのため、2014年には地域における医療と介護を一体的に提供するために医療介護総合確保推進法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)が成立しています。
医療介護総合確保推進法は2025年に向けて各市町村が医療・介護・介護予防・住まい・日常生活の支援を包括的に確保する地域包括ケアシステムを構築することを目的とした法です。
その中で医療と介護の連携は重要視されており、それに合わせて医療法も改正されることになったのですが、それが第6次医療法改正になります。
病床機能報告制度の創設と地域医療構想の策定
第6次医療法改正当時の性・年齢階級別の医療サービス利用状況から将来を予想すると、1日当たりの入院患者数は133万人から162万人(2025年)に増加する見込みとなっていました。
その入院患者数に対応するための病床数を試算すると、一般病床は107万床から129万床に、また病床総数では166万床が202万床にまで急増する結果となりました。
しかしながら日本は諸外国に比べて人口あたり病床数は多い一方で医師数は少ないことから、十分な必要病床数の増加は難しいと考えられました。
そのため、医療資源を効果的かつ効率的に活用して病床の機能分化を進め、機能に応じた資源投入を図ることによって、入院医療全体の充実を図ることが必要と考えられたのです。
そこで病床の機能分化を進めるためにできたものが病床機能報告制度になります。
病床機能報告制度では、医療機関は自院の病床の医療機能(急性期・亜急性期・回復期等)を都道府県知事に報告する必要があり、都道府県は策定した地域医療ビジョン(二次医療圏ごとに地域の医療提供体制の将来の目指すべき姿)をもとに、各病床数を管理することになります。
これにより、各医療機関の独自意思による病床機能の偏りが起きないように病床が調節されることになりました。
例えば、都道府県知事は正当な理由なく稼働していない療養病床を削減できるようになりました。
医療機関が具体的に報告する病床機能は高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能になります。
病床機能報告制度と地域医療構想については医療経営士のお勉強 病棟・病床編の病床機能報告制度と地域医療構想にも目を通しておいてください。
居宅等における医療の充実、医療・介護の連携の推進のための医療計画の見直し
第6次医療法改正の一環として改正された法律のなかで、厚生労働大臣『地域において効率的かつ質の高い医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(総合確保方針)』を定めなければならないと規定されました。
そして医療法第30条の3では総合確保方針に則して、厚生労働大臣は良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保のために基本的な方針(基本方針)を定めるものとする、と規定してされています。
医療計画については別記事でまとめたいと思います。
地域医療支援センターの機能を医療法に位置付け
地域医療支援センターとは都道府県に設置する「地域医療に従事する医師のキャリア形成支援と一体的に、医師が不足する病院への医師の派遣調整・あっせん等を行う」ことを目的としたセンターです。
つまり、地域の医師不足を解消するためにできたのが地域医療支援センターになります。
地域医療支援センター事業は2011年に始まっていますが、医療法に位置付けられたのは第6次医療法改正時なのですね。
地域医療支援センターについては医師不足対策編で扱っていますので参考にしてください。
医療事故に係る調査の義務化、医療事故調査・支援センターの創設
医療の安全性を確保するために、医療事故に係る調査が義務化され、医療事故調査・支援センターが創設されました。
厚生労働大臣によって指定された医療事故調査・支援センターは、死亡事故などの医療事故が発生した場合に報告を受け、次に挙げる業務を行います。
- 1.医療機関から提出された医療事故調査報告の整理・分析
- 2.医療機関の管理者に対して、整理・分析を報告
- 3.医療機関の管理者や遺族から依頼があった場合は必要な調査を行い、結果を管理者や遺族に報告
- 4.医療事故調査の従事者に対して医療事故調査の知識・技能に関する研修を行う
- 5.医療事故調査の実施に関する相談に応じ、必要な情報の提供・支援を行う
- 6.医療事故の再発防止に関する普及啓発を行う
なお、医療事故調査・支援センターが医療機関の管理者や遺族からの依頼を受けて調査を行う際には、必要に応じて説明や資料提出などの協力を求めることができます。
そして医療機関の管理者はこれを拒否することはできません。
医療機関における勤務環境改善への施策
さて第6次医療法改正についてテキストにはありませんが、内容の補足をしてきます。
まずは医療機関における勤務環境改善への施策についてです。
医師のみならず医療従事者が安定して勤務することが適切な医療の提供と医療安全につながることから、勤務環境の改善を通じて、医療従事者が健康で安心して働くことができる環境整備を促進することが重要と考えられました。
その一環として、勤務環境改善マネジメントシステムの仕組みが導入されました。
勤務環境改善マネジメントシステムについて、厚生労働省のホームページ上にある説明を引用してみます。
勤務環境改善マネジメントシステムとは、各医療機関において、『医師、看護師、薬剤師、事務職員等の幅広い医療スタッフの協力の下、一連の過程を定めて継続的に行う自主的な勤務環境改善を促進することにより、快適な職場環境を形成し、医療スタッフの健康増進と安全確保を図るとともに、医療の質を高め、患者の安全と健康の確保に資すること』を目的として、各医療機関のそれぞれの実態に合った形で、自主的に行われる任意の仕組みです。
各医療機関においては、国が定めた指針や手引きを参照して、多職種で構成する推進チーム等により、現状の把握・分析、課題の抽出を行い、できることから改善計画を策定して取組を始めてみましょう。
また、都道府県ごとに、勤務環境改善に取り組む医療機関を支援するための「医療勤務環境改善支援センター」を順次設置し、医療労務管理アドバイザー(社会保険労務士等)や医業経営アドバイザー(医業経営コンサルタント等)が専門的・総合的な支援を行っています。取組に当たってお困りごとや相談がありましたら、各都道府県の医療勤務環境改善支援センターへお問い合わせください。
厚生労働省の引用文を簡単にまとめると勤務環境改善マネジメントシステムとは、各医療機関がPDCAサイクルを活用して計画的に勤務環境改善に取り組む仕組みとなります。
勤務環境改善マネジメントシステムは各医療機関でPDCAサイクルを回りながら取り組むことであり、都道府県はサポートのために医療勤務環境改善センターを整備していることを理解しておきましょう。
地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような包括的な支援・サービス提供体制を構築するシステムのことです。
言い換えると『高齢者が自分の暮らしたいところで極力自立して生活できるように、医療・介護の垣根を越えてみんなでサポートしよう』ということかと思います。
厚生労働省資料では地域包括ケアシステムの5つの構成要素として介護、医療、予防、住まい、生活支援・福祉サービスが挙げられています。
また、『自助・互助・共助・公助』からみた地域包括ケアシステムについても述べられています。
住まいを中心として、医療、介護、予防、生活支援の構成要素があることがわかりますね。
地域包括ケアシステムの想定範囲は、概ね30分以内にサービスが提供される日常生活圏域(中学校区)となっていることもわかります。
最後に地域包括ケアシステムについて、厚生労働省のコメントを記載しておきます。
今後のさらなる高齢化による様々な問題は、地域で一体となって乗り越えていく必要がありますね。
第6次医療法改正については、ひとまずここまでです。
これくらい押さえておけばいいとは思うのですが…